訳された言葉は、「やめて!」と「やめてだって?」の二つです。翻訳者の柳田邦男さんにとっては、「NO!」を訳すだけの楽な仕事だったでしょうか。いいえ、「NO!」が「やめて!」と訳されたからこそ、この本は生かされたのではないかと私は思っています。
戦争が続く町のなかを、大統領に宛てた手紙を投函するために、幼い少年は歩いていきます。ポストのまえで、投函するのを不良少年に邪魔されそうになりますが、「やめて!」と叫ぶことで、投函することができます。
今を生きている私にとって、この「やめて!」の言葉の重さを感じぜざるを得ません。大人たちが発しなかったひとことを少年が発したことにより、世の中は変わっていくのです。
私のまわりには、たくさんの諦めがあります。小さな絶望もあります。しかし、この少年のように、勇気をもって「やめて!」と言えば、何かが変わるかもしれません。それも一人だけでなく多くの人が同じように勇気をもてば、目の前にある困難を乗り越えていくことが出来るのではないかと思います。
「やめて!」のひとことが、この絵本を読む人に「希望」をあたえてくれるでしょう。