この頃、機会があってモーパーゴさんの本を続けて読んでいます。彼の作品には、戦争を扱ったものが多いようですが、この本の最後の訳者あとがきには、
『戦時下を舞台に数々の名作をものにしているモーパーゴは、
一方の国だけを非難するような書き方はしていません。国の別なく、戦時下のふつうの人たちがみな一様につらい思いをしていることを、物語を通して訴えています』
と書かれてあり、まさにその通りだと思いました。
この物語の中でも、すべてに対して平等に淡々と描かれているような気がします。
そして、すごい設定なのです。爆撃が続く中に、ゾウを連れて逃避行する。さらに、自分の町を爆撃して壊滅させた敵国兵といっしょに逃亡した上に、最後は結婚するのです。
自分だったらとてもじゃないけれども、そういう人を愛せるだろうか、愛すまでいかなくても許せるだろうか、さらには許せるすらできず、怒りのあまりにすごいことだってしかねないかもしれません。
でも、それが、この物語を絶望で終わらせないというモーパーゴさんの信念であって、ひいては、戦争に対するモーパーゴさんの願いなのではないでしょうか。
読んでよかったと思います。
このレビューのタイトルは、登場人物が口にする言葉です。