作者のジェームズ・サーバーは、作家、画家、劇作家、新聞雑誌の記事執筆、編集、エッセー、小説、脚本、演出、風刺的挿絵、漫画家、と多才だったそうで、「たくさんのお月さま」でも、この「おもちゃ屋のクィロー」でも、いとしいおもちゃのような描写をたくさん、見せてくれます。どちらの作品もまさしく彼の才能の集大成です。
絵本ではなく、おはなしなのですが、飯野和好さんが挿絵をつけており、これがまた、表紙から引きつけられます。
福音館書店にによれば、5才から小学校中級向きだそうですが、上限無く楽しめると思います。
あるところにハンダーという大男がいて、こいつが歩くと、遠くの湖にさざ波がたつくらいのばかでかさ。いろんな町を渡り歩いては、略奪を繰り返していたのですが、そのハンダーが、男が100人女が100人こどもが100人住んでいるだけの小さな町にやってきます。
二週間と七日の間、毎日リンゴ千個分のパイをくれだの、新しい上着を作れだの、とてつもない要求をして、町の議員たちを困らせます。だって、議会ではいつもは、空の星の数を数えたり、透き通ったガラスの素晴らしさについて話し合ったりしてるだけなんですから。
ハンダーの要求には「毎日ひとつ、はなしを語ってもらいたい」というのもあって、これを町一番のちびの、おもちゃ屋のクィローが引き受けて、大男の脅威から町を救います。
クィローは普段は、小さい小さいトランペットで七つの音色を奏でるトランペット奏者を作ったり、降る雪の中で開き始めるバラの花の姿をはめこんだ文鎮などを作ったり、クリスマスにこどもたちに素敵なプレゼントをしてくれたり、町の時計にからくり細工をを作ったりしている、ごきげんなおもちゃ屋さんなんです。
77ページほどのこのおはなし、どんなふうに語ったら魅力的か考え中です。