こんな名作があっただなんて・・・!
また、すばらしい絵本を見つけることが出来て嬉しいです。
旅立つヤマネコに、
動物たちが 思い出をプレゼント・・・。
刺繍に想いを込めるというところが
ちょっと切なくて、どうしようもなくあたたかいです。
大好きな職場をやめるときに、
長いこと一緒に働いていた仲間たちからもらった
色紙を思い出しました。
あの色紙にも、「あの時はこうだったね」「こんなこともあったね」
と、思い出がぎっしりと詰め込まれていたなあ・・・。
誰かを想う気持ちを、
「形にして」、「届ける」・・・。
それが別れの場面であれば、感動的なシーンになることは必然なのですが
この絵本は、冒頭から 動物たちがそれぞれ
ヤマネコとの思い出を噛み締めながら
一針一針、布に刺繍をしてゆくのです。
そのシーンが連続するからこそ、
最後に ぶわわっと、温かいものが込み上げるのだと思います。
それにしても、動物たちの話を聞いているうちに
ヤマネコの性格がみえてくるのが面白い。
なかなか破天荒で奔放なようですが、
それでも こんなにみんなに好かれているヤマネコは
とても幸せものですね。
ヤマネコにがっかりさせられたノウサギも、
ヤマネコに追いかけられていたシマリスも、
思い出をプレゼントするのです。
ハリネズミに至っては、
あやうく食べられるところだったのに
刺繍のプレゼントをしようと みんなに提案するのです。
ああ、なんて羨ましい。
こんなあたたかい毛布は、どこを探してもみつからないでしょう。
と、物語のことばかり書いてしまいましたが、
挿絵はどれも愛らしく、そして色合いが美しいです。
文章は、構成が面白く、声に出して読んでみたいと思うほどです。
けれども、そう思うよりも前に
物語自体が好きだと感じました。
とても魅力的で、ふくよかな絵本。
復刊された理由が、よく分かります。
沢山のひとの目に触れないと、もったいない絵本だと思います。