「たんぽぽ」といえば、
俳人・坪内稔典さんの代表句「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」を思い出す。
あまりにもユニークすぎて、子供たちのポカンとした顔まで浮かびそう。
「たんぽぽや日はいつまでも大空に」(中村汀女)あたりがいいだろう。
春は色々な花が咲きそろう季節だから、桜を筆頭にそれぞれに好みの花がある。
なかでも、「たんぽぽ」は地面に沿うようにして咲く花だから、
子供たちの目線に近いこともあって、子供たちが好きな花のひとつにちがいない。
荒井真紀さんの細密画で描かれた絵本『たんぽぽ』を読むと、
単に花を愛でるだけでなく、植物がもっている不思議がとてもうまく伝わってくる。
「たんぽぽ」の場合だと、まず花がどの部分という不思議がある。
え?! あの黄色いのが花ではないの? って誰もが思う。
この絵本によると、
「ひとつのはなにみえますが、たくさんのちいさなはながあつまって」できている。
その小さな花の根元にふくらみがあって、
それがやがて綿毛となっていくそうだ。
ちなみに、俳句の季語ではこの綿毛は「絮(わた)」と呼ばれている。
荒井さんの絵本ではたくさんの綿毛が見開き2ページ一面に描かれていたりする。
「たんぽぽ」が子供たちに人気があるのは、
この綿毛があるからかもしれない。
ふっと吹く、それはまるでしゃぼん玉遊びみたいだし。