町も野もいたるところ緑の葉に包まれている春の夜、一人暮らしのおばあさんが針仕事をしていました。
年を取って目が悪くなったので、針のめどに糸を通すことができず、ランプの灯に糸をすかして眺めたり、糸をよったりしていました。
そんなとき、外の戸をコトコトと叩く音がしました。
おばあさんの家に訪ねてきた人たちは春の夜のようにぼんやりとしていて、現実のような気がしません。
この絵本は春だからこそのお話で、他の季節の設定だったら、こんなに幻想的なお話にはならなかったような気がします。
どこまでもぼんやりとしていて、まるでぐっすり眠っている誰かの寝言のようです。
読み進める途中で何かの疑問を抱いたとしても、それを解明するのが憚られるような絵本でした。