この本、とてもいい。清々しくて、読んだあと何か自分の中身が浄化されたような気分になります。
ひきがえるのウォートンは、おばさんの家にさとうがしを届けるため、雪の降り積もった真冬に旅に出ます。初めてのスキーに乗って颯爽と旅立つウォートン。ところが、途中の谷でみみずくにつかまり、5日後にひかえた誕生日のための『特別のごちそう』にされてしまいます・・・。
みみずくとひきがえる、食べると食べられる関係にある2匹。この2匹の間に流れる空気の変化が実に巧みに描かれています。天敵同士の友情、というテーマは、爆発的ベストセラー「あらしのよるに」と同じ。でもわたしは、こちらの方がずっとすきです。2匹の出会いに嘘もごまかしも勘違いもないから。
明確に『食べる食べられる』の力関係を示した上で、それでもなおかつ、彼らが心をつないでゆく、という直球勝負は、子どもの読み物であるが故に力量を問われます。明るく楽天的で思慮深いウォートンがとても魅力的に描かれ、みみずくの感情の変化に普遍の説得力があり、そして、この話は成立する。
大人のすれた目で読んでしまうと、結論は途中から見えてきます。けれど、子どもたちはそうではない。大人でありながら、あえてこのテーマをまっすぐに書いてきた作者エリクソンの、作家としての潔さが、清々しい読後感を呼ぶのだと思います。
モノクロですが挿絵もふんだんにあります。幼年童話に分類されてはいますが、一対一の読み聞かせでなおかつ、聞き手が慣れていれば、5〜6歳から充分楽しめると思います。うちの息子にとっては、今年のナンバーワンかもしれません。それくらい大好きになった本です。