この絵本、物語が絵に囲まれて、いかにも著者の思いが前面に出ている。
それでいて、その文字が絵の一部であるかのように、周りを囲む絵の細やかさと調和していて、素晴らしい。
話は、木の精の話。
木の精が、村人たちと共存していたときは、自然はみんなのものだった。森のめぐみを分かち合い、自然のめぐみ以上のものを欲しなかった。
この均衡を破ったのは、人の欲望である。そして、村人たちの素朴な生活を崩していく権力である。
権力は住民を引き離し、利益を上げるために欲望のまま商人や学者の協力者と手を結ぶ。
温室が作られ季節がなくなる。人工的に環境が変えられていく。
温暖化。無理に育てた木の中に魔物が生まれる。そして、商人や学者や権力に逆襲し、村人さえも土地から追いやってしまう。
最後は環境破壊…。(経済破壊でもある)。
この絵本、今そのものではないか!
この現代そのものを、著者はモクという木の精を通して語りかける。決して主張や説教でないところにこの本の重さと不気味さがある。
読み聞かせをしながら、この絵本は大人のための絵本だと思った。読み聞かせが終わって、子どもに説明できる大人になって欲しい。そんな絵本だと思った。
最後に、崩壊した土地から再生の芽が生まれているところが救いである。