タイトルからサンタはおばさん、つまり女性という意外性をすでに明かしてしまっていますが、本当の意外性は、読み手の中に刷り込まれて疑わない、サンタの固定観念を覆されるところにあります。
(その前に僕自身、サンタは世界に一人きりだと思い込んでいたので、世界中のサンタが集まって会議を開くという設定がすでにアンビリーバボーなのですが、うちの7歳の息子に聞くと、「国ごとにサンタがいないと、プレゼント配るの大変じゃん」と、すでに世界には100人くらい、国の数だけサンタがいると信じているらしいのです。家族であってもこれですから、日本人同士でも、サンタのイメージは全然違っているのかもしれませんね。)
お話しでは、アメリカサンタが引退することになり、次期サンタ候補に推挙されたのが女性とあって、サンタ同士でも白人男性が好ましいとか、髭はどうするのかと、喧々諤々の問答が繰り広げられます。
とても人間くさいサンタの姿に、レイモンド・ブリッグスの「さむがりやのサンタ」を連想しますが、最終的には、サンタの性や容姿よりも、存在意義の原点に立ち戻って決着します。(とはいえ、僕としては日本のサンタ像はやや夢が壊れてしまいそうで、固定観念のままでもいいかなとも思えました‥)
主人公のおばさんサンタも、家へ帰ればひとりの女性という続きのお話しも、ほっこり心温かくなるクリスマスはやっぱりいいなぁと思える作品です。