「冬枯(ふゆがれ)」は、俳句の冬の季語。「冬が深まり木や草が枯れはて、野山が枯一色となって蕭条たる光景」と『歳時記』にあります。
「鳥うせて烟のごとく木の枯るる」(富澤赤黄男)のように、植物だけでなく動物たちの姿も消えるさまを詠んだ句もあれば、そんな中にも命の営みを詠んだ「枯れきつて育む命ありにけり」(西宮舞)といった句もあります。
安東みきえさんのこの絵本は、まさにこの二つの句が合わさったような作品です。
冬枯れだからこそ、見事に咲く花(どんな花でしょうか)を堪能できる、そんな絵本です。
登場するのは、初めての冬を迎えたこねずみです。
池のそばで泣いています。と、池から顔を出したのは一匹の金魚。
「なくのはきらい」と、こねずみに声をかけます。
こねずみは金魚に泣いている訳を話します。
せっかく友だちになったつばめやヤマネが冬になっていなくなって「ひとりぼっち」になったと泣いていたのです。
そして、「花も咲いていないから」とまた泣くのです。
金魚は自分が友だちになると約束します。
金魚もまた最近この池に捨てられて、仲間たちとなかなかなじめなかったのです。
次の朝、雪が降りました。
白い花のような雪を見て、こねずみは大喜び。さっそく友だちになった池の金魚に会いにいきますが、池は一面凍っていて、金魚 に会えません。
池の中からこねずみのことを見ていた金魚も焦ります。
その時です。池の中でひとりぼっちだと思っていた金魚の仲間たちが集まってきます。
吉田尚令さんの見事な絵に、きっとあなたも心打たれるでしょう。