一言で言えば、愉快な本。ユーモラスな絵はくすんだ色彩とよく調和して、何かとぼけた味わいを醸し出しています。ストーリーもどこか間が抜けていて、ふにゃっと期待をかわされてしまうような、いい意味での脱力感がある本です。
いわゆる「かわいさ」とは一線を画していますが、案外子供は、この手の絵本を好むものではないでしょうか。大人の考える「かわいい絵本」は、実は大人側の都合で作り出された、大人の希望を反映したものだったりします。この絵本には、そういう匂いがしません。頭に帽子を乗せて売り歩くぼうしうりのナンセンスさ、怒ったぼうしうりのマネばかりする、たくさんのおさるのバカバカしさ、そういう「かわいくない」ところに子供がおもしろがる「愉快」の本質があるような気がします。好みは分かれるでしょうが、私は気に入っている絵本です。
息子は、おさるが一斉に「ツー、ツー、ツー」というところでいつも大笑いです。が、正直なところ、親ほどには好きでないようで、それほど頻繁に持ってくる本ではないですね。この辺は、親の好みを一方的に受け入れる歳ではなくなったのだ、自立の現れだ、と好意的に解釈しています。