力を力で制そうとしても、火に油を注ぐだけ。
「虎の怒りを鎮めるために、王子を虎に差し出しなさい」
といった占い師のおばあさんは、そのことを知っていたのではないでしょうか?
「虎が王子に危害を加えることはありません」
とも言っていますし。
虎だって、理由もなしに人を襲っていたわけではないのです。
子どもを猟師に殺されて、それで人が憎くなって襲っていたのです。
自分の子どもと人間の王子が重なって、虎の怒りが静まるシーン。
それまでは、もしかしたら、ただ興味で王子と一緒にいたのかもしれません。それが、母親として王子に接するようになるのは、自分の子どもと人間の王子を重ね合わせた、あの場面以降のような気がします。
わが子の代わりに王子を立派に育てた虎と、兵士たちに止められるのを振り切ってまで虎の前に飛び出して、わが子の元に駆け寄ったお后。一人と一匹の愛情は、誰よりも深いもののように感じられます。
もちろん、王子の無事を願うばかりに、森に火を放ってしまう王様も、それはそれで愛情の一つの形なのですが…。ちょっと考えさせられますね。
虎に育てられたウェン王子は、父親を超えるような素晴らしい王様になった…んじゃないかと思っています。