エルマー3部作の最終巻です。今度は、なんとなんとりゅうの家族が15匹も出てきます。
私は元々登場人物の多い話が好きなので、りゅうの家族総登場は大歓迎です。
話の前半は、エルマーと別れたりゅうが一人で悪戦苦闘します。
前の2作では、どことなく甘えん坊の雰囲気が漂い、常にエルマーの庇護や指示を求めていたようなりゅうが、一人で考えて行動し、一生懸命エルマーのところまでたどり着くのです。
その過程は、子どもが初めて一人だけで何かを成し遂げるような緊張感と感動があります。
そして、とうとうりゅうの家族15匹が出てくるところは大迫力です。
私は見開き2ページに描かれた、車座になったりゅうの家族の絵が、子どもの頃怖かったのですが、反面、とても惹かれるものもあって、そのページが近づくと妙にドキドキしたのを覚えています。
今でもそのページには特別な思い入れがあって、りゅうが兄弟の説明をするページに戻ったりしながら、1匹1匹、これがお兄さん、これはお姉さんなどと確認したりしています。
物語には直接関係ないような兄弟の色や模様、名前が、総てきちんを書かれているところなど、15匹をまとまりとしてだけ登場させるのではなく、個々を尊重して初めて家族という一個のまとまりにしているような気がします。その結果、りゅうの家族に対してとても親しみを感じてしまいます。
そして、いよいよお別れ。私は「りゅうはもぞもぞとエルマーをだきしめました」というところが大好き。この一文に、不器用なりゅうの、エルマーへの愛情が集約されているみたいでなんともいいのです。
そしてエルマーは現実の世界に戻ってきます。
読者もはっと夢から覚めたような気になって、なんとなく物悲しい気持ちになりますが、でも、いつかまたきっと・・・という期待も持ち続けてしまうのです。