【あらすじ】
サッカーが大好きな少年が、家に帰ると、窓から小鳥が飛び込んできた。一分でも早くサッカーの練習に行きたい少年は、小鳥を部屋に閉じ込めたまま家を出る。
家に戻ると、小鳥がいない。お母さんと一緒に小鳥を探すと、ことりは花瓶の中でおぼれ死んでいた。生き物の死を目の前にした、少年と、両親の、真摯な対応が淡々と語られる。
【感想】
この話は実話です、と作者からのメッセージに書いてあったので、覚悟して読みました。どうしてインコが花瓶の中で死んでいたのか、閉じ込められた部屋でのどが渇いたから、水を飲もうとして落ちたのか。死んでしまった本当の理由はわかりません。しかし、インコの死を見た少年が、自分の責任だと感じて、小さな心を痛める様子や、少年のご両親がインコのお墓を作ったり、インコの飼い主を探してみようとする様子を見て、心を打たれるものがありました。
自分も子どもの頃、弱った小鳥を拾ってきて、介抱しようとしたけど、結局次の日には死んでいたことがありました。この本の少年や、作者のねじめ正一さんの言葉のように、「いのちの手ざわり」とでもいうべきものが、今でも自分の掌に残っているような気がしてなりません。
生き物の死、命のことを扱う作品は、難しいと思います。書く方も、読む方も、覚悟がいるから、ついつい後回しにしてしまうような気がします。重たいテーマなので触れないで済むなら、そうしたい気もします。しかし、生きることや死ぬことからは、誰も逃げる事ができません。動物を飼っていれば、先に死なれることもあるでしょう。飼っていなくても、動物の死に直面する事は、けっこうあることです。道端で死んでいる生き物、動物園で死んでしまった生き物、そしてスーパーに並んでいる肉も生きていました。生きる事の重たさを、ちょっと考える時間が、いくつになっても必要だと思いました。