いつもはセレスティーヌを包み込んでくれる、包容力のアーネストおじさんが、街角で耳にしたバイオリンのメロディーで別人になってしまいました。
遠い昔にアーネストおじさんの母親が歌ってくれた歌だったのです。
ルーマニアの歌だというところに、アーネストおじさんの思い出に隠されている深い悲しみと傷を感じました。
内政や諸外国に翻弄されたルーマニアの歴史を考えると、決して幸せな生い立ちではないのでしょう。
それだから今の、セレスティーヌに優しいアーネストおじさんがいるのです。
セレスティーヌには、有り金をすべてバイオリン弾きに渡してしまうアーネスト、パスタを頭から被って子どものようにふざけるアーネスト、自分のことをかまってくれないアーネスト、何かに取りつかれてしまったようなアーネストが理解できません。
それだからこそアーネストおじさんの哀愁がひしひしと伝わってきました。