寂しさも悲しみも忘れた涙を知らない孤独な泥棒。
二つの国の間の小高い丘に住んでいた。
小屋の両サイドには窓が、両方の国のお城を眺められて、どちらも自分のものに思えて、ご満悦。
ある日、仕事(泥棒)に失敗し、とりあえず小さな箱を一個だけ盗って逃げ帰った。
箱の中身は、………。
命を育てる喜びを知り、泥棒が変わっていくところが感動的です。
どんな人間にも、必ず「愛する感情」が備わっていることを信じさせてくれます。
ストーリーも、反戦を静かに、しかし、深く訴えかける内容で思わず読み手を引き込みます。
絵が、泥棒のキャラクターにマッチしていて、もの悲しい孤独感、うらぶれ開き直り淡々と生活する様子が良く伝わってきます。
特に、戦争勃発で、家へ戻る町中のシーンは、とっさにピカソの『ゲルニカ』を連想してしまいました。
最後のページで救われた気分になり、表紙絵を閉じてこの絵の意味がわかるようにできているのが、なんとも、素晴らしい作りだなと思いました。
皆さんにお薦めしたい良書です。
10歳の息子も読んで、ため息を漏らし、「命は強いな。」と、鼻をチーンとかんでいました。
お話し会(中高学年)で、読んでみたいと思います。