絵本作家で鳥の巣研究家でもある鈴木まもるさんの、第一次世界大戦中の戦場で本当にあった話を絵本にした、この『戦争をやめた人たち…1914年のクリスマス休戦…』が出版されたのは2022年5月。
もちろん、これは絵本という出版物として書店に並んだ時で、鈴木さんが実際にこの絵本を描いていたのはそれよりもずっと前。
あとがきとなる絵を描いている時にロシアによるウクライアへの侵攻が始まったことが、巻末の「制作ノート」に綴られています。
ウクライナへの侵攻、あるいはイスラエルによるガザ地区での戦闘、世界で消えることのない戦争があって、この絵本は描かれたのではありませんが、鈴木さんの感性が世界の悲しみをいち早く捉えたということかと思います。
鈴木さんは「制作ノート」にこうも綴っています。
「戦争することよりも強い、人の優しさと想像力が描きたくて、絵を完成させました。戦争をはじめるのも人ですが、戦争をやめることができるのも人です。」と。
絵本で描かれている物語はこうです。
第一次世界大戦さなかのドイツ軍とイギリス軍が向かい合っている最前線の12月24日の夜のこと。
敵側の陣地から聞こえてクリスマスの歌。「きよしこのよる」。
それにあわせるように味方の陣地からも歌声が。
やがて、二つの陣営から兵士たちがともに立ち上がって「メリー・クリスマス」と握手を交わします。
それからはともに兵士たちが語り合い、最後には手製のボールでサッカーまでしたといいます。
クリスマスが叶えた夢のような休戦。
鈴木さんはこの絵本の最後に、こう書きました。
「この星に、戦争はいりません。」