絵本を書く人は、絵本作家と呼ばれますが、
最近ではそうではない、異業種の人の参入が多くあります。
そういう人たちの絵本は、文のみの提供で、
絵は専門の人が描いていることがほとんどです。
この『あんまりすてきだったから』は、
『氷柱の声』で第165回芥川賞候補になったくどうれいんさんが
文を書いています。
くどうさんは作家ですが、俳人でも歌人でもあったりしますから、
言葉に対しての感性がとても高いのだと思います。
この絵本でも、絵本物語の途中とちゅうに、おもしろい言葉がはさまっています。
例えば、テレビで見た歌手の歌声が「あんまりすてきだったから」、
こんちゃんという女の子は歌手に手紙を書きます。
ポストまで歩く女の子についた言葉が、
「てってこてこ てってこてこ たててととっ!」です。
意味があるような、ないような。
そんな言葉が、物語の進行とともに、たくさん出てきます。
物語は前へ前へ動いていくから、面白い。
この絵本では、こんちゃんの手紙とともに、前に進みます。
くどうさんは、そういう物語の面白さをよく心得ています。
絵は、みやざきひろかずさんが描いています。
絵のタッチから、あ、この人、『ワニくんのおおきなあし』を描いた人だと
気がついた人は、
かなり絵本通です。
文のプロと絵のプロがあわさって、いい絵本ができました。