読書の普及の推進で文化の向上と社会の進展に寄与する目的で結成されたのが
「読書推進運動協議会」という組織で、
そこから成人の日に合わせて「若い人に贈る読書のすすめ」、
敬老の日に合わせて「敬老の日読書のすすめ」という
リーフレットが作成されている。
小さな冊子ながら、それでも24冊のおすすめ本が紹介されていて、
今年の「敬老の日読書のすすめ」の一冊に、
この村中李衣さんの『奉還町ラプソディ』がはいっていた。
挿絵を石川えりこさんが描いていて、シニア向けのおすすめ本ながら、
これはれっきとした児童文学なのだ。
岡山にひっこしてきた「ぼく」には、「奉還町商店街」でまんじゅう屋をしている
あつしという友達ができる。
この二人の小学生が主人公だが、
二人以上に活躍するのが「奉還町商店街」の老人たち。
そもそもこの商店街は、「大政奉還」の際に配られた奉還金でもとに始まった
歴史のあるところだが、
多くの店の主人たちはみな年をとっている。
商店街も寂れつつあるが、それでもみんなへこたれていない。
こわい顔をいた洋服屋のおじさんも、
年取った理髪店のいのうえさんも接骨院の先生も苗屋のおばさんも
みんな元気だ。
小学生の二人はそんな老人の元気にふりまわされる。
でも、そんなことを「ぼく」たちは嫌っていない。
むしろ、一緒に楽しんでいる。
そうやって読んでいくと、
この物語は児童書ではあるが、老人向けでもある
そんな贅沢なつくりになっている。
この本を読んだ子どもたちがおじいちゃんやおばあちゃんの笑顔を見たいと
言い出すかもしれない。