絵本の良さはたくさんありますが、その一つは季節ごとに楽しめる作品がたくさんあることです。
春には春の、夏には夏の絵本があります。
紅葉の頃の秋の絵本もありますし、冬には雪の絵本もあります。
クリスマスを描いた絵本はたくさんあります。
正月の絵本もそうです。
絵本で季節を味わう。
しかも、その季節の昔からある習慣なども、絵本で体験できるのです。
歳末の時期にぴったりの絵本がこれです。
なにしろ始まりは、12月28日なのですから。
きりちゃんはおばあちゃんと一緒に歳末で大賑わいの商店街に出かけます。
おせちの材料を買うためにです。
魚屋さん、乾物屋さん、八百屋さん。「屋」がつくお店って、人と人とが触れ合う場所でもあります。
だから、おばあちゃんの話も弾みます。
こういう場所も段々少なくなっていますが、物を買うのはそういうことを楽しむことでもありました。
次の日、29日は家族みんなで大掃除。
おばあちゃんは障子の張り替え。
昔は年の暮れには障子を張り替えたものです。
窓ふきは大抵子どもの係でした。
夜はおせち料理のつづき。
そして、30日。
おせちづくりも佳境にはいってきました。
そして、31日おおみそか。
おばあちゃんのおせちが完成します。
「いちのじゅうには。いわいざかな。にのじゅうには、やきものとすのもの。さんのじゅうには、おにしめ。」です。
最近はおせちもたくさんのお店で売っていますから、それを買ってすます家も多いと思います。
でも、昔はみんな自分の家で作ったものです。
そういえば、残念ながらこの絵本では餅つきまでは描かれていません。
年の瀬には餅つきは欠かせないものでした。町じゅうにぺったんぺったん餅をつく音がしたものです。
こういう絵本を読むと、そういえば大晦日の夜、まだ片付かない部屋の掃除を一人母がしていたことを思い出します。
紅白歌合戦が始まってもまだ正月の準備に忙しく働く母。
そんな風景とともに年が暮れていったものです。