奴隷とはどういったものだったのか、切実に訴える絵本。
短い絵本の中にとても大きなドラマがあります。しかも絵本の絵の断片のなかに、スケールの大きな映像があります。
ヘンリー・ブラウンには、誕生日がなかった。奴隷には、生い立ちの記録などない。
奴隷は物と同じように売り買いされる。自分の意志など相手にしてもらえない。
奴隷は道具としてこき使われる。家畜同然の扱い。
同じ境遇のナンシーと知り合い、つかの間の家庭生活。それも、金に困ったナンシーの主人が売り飛ばしてしまう。
家族が実は家族扱いされていない。奴隷は家畜? ヘンリー・ブラウンは、道具を作るための道具だった。
もう二度と会うことはできないって、どう考えても人間じゃない!
「ヘンリーの自由への箱」。開放への命を運んでくれた箱。この原題も素晴らしいです。自由へのお誕生日、おめでとう。
暗い過去から、開放された日が誕生日。
この絵本を読みながら、自分はそのようなことを思いました。
こんな事実を子どもはどのようにとらえるのだろうか。過去形で考えるのだろうか。
それにしても、厚い書籍や教科書を通じて学ぶより、ストレートに心に伝わるのではないかと思います。
奴隷の意味と歴史。そして、実は現在につながる黒人問題の原点であることを、親も子どもと一緒に学ぶことが重要だとも思います。
身近に奴隷はいないけれど、身近な現実に置き換えてもこの絵本から学ぶことも大きいと思います。
厚みのある絵がとても効果的だと思いました。