黒柳徹子さんの大ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』に
小学生のトットちゃんが一歳年上で小児麻痺だった泰明君と
木に登る有名な挿話があります。
泰明君は病気ですから、それまで木に登ったことがありません。
だから、トットちゃんは泰明君に木の上からの風景を見せてあげたいと思うのです。
そして、ついに木の上に登った二人。
そこで、トットちゃんは泰明君から初めて「テレビジョン」という言葉を聞きます。
『窓ぎわのトットちゃん』でも、とても印象に残る場面です。
この『木にとまりたかった木のはなし』は、
木のぼりが好きで木にとまってみたいと思っていた女の子だった黒柳徹子さんが
初めて書いた絵本です。
1985年のことです。
その時は岩崎書店から刊行され、2023年に河出書房新社から新装版として出ました。
絵は武井武雄さんという画家ですが、
実は黒柳さんが絵の依頼をしてまもなく武井さんは亡くなってしまいます。
でも、そこからが不思議なのですが、
黒柳さんのお話にぴったりの絵が武井さんの作品に何枚も残っていたのです。
黒柳さんのお話はもちろん武井さんの作品で合わせたものでもなく、
武井さんの絵も黒柳さんのお話に寄せたものでもありません。
それでいて、
木にとまりたいと願った木が鳥たちの協力で次から次へと冒険していく様子が
とてもうまくひとつの作品になっています。
黒柳さんのお話もいいですが、
一冊の絵本が生まれる奇跡のようなお話もまた胸をうつ、
そんな絵本です。