1人もんの欲張り男がおったら、飯を食わんというおんなが押しかけてきた。初めは喜んでいたけれど、実はその女は鬼婆で…。
稲田さんの情景描写・心理描写の言葉が素晴らしい本。
赤羽さんのこどもだからこそ全力で描いた怖い鬼婆の絵が素晴らしい本。
女が大釜いっぱいの飯をにぎりにする「ぴつっぴつっ」という表現や、男を桶にいれて頭に担いだ鬼婆が言う「しっとりしっとり重たいわい」というセリフ。なんて怖いんでしょう!何てワクワクする事でしょう!
読んでもらっているこどもらの不安が頂点に達した頃、鬼婆はヨモギと菖蒲のはえた場所にさしかかり「毒があっていけない」とか「刀があっていけない」と言うので、こどもらは鬼婆の弱点をしり、その先の展開に僅かな期待をもつことができます。
欲張り男の驚きと不安、恐怖はそのままこどもたちのものとなります。草原を飛ぶように走る鬼婆の怖いこと怖いこと!
まさに鬼の本性を表した絵です。ヨモギの汁が鬼婆を溶かしていきますが、その絵は美しくすらあります。この美しさでこどもは物語の世界から、現実へもどってくる事ができるのでしょうね。赤羽さん…本当に天才です。
ヨモギは人間にとって毒だしの効果絶大な草だし、菖蒲の葉はまさに刀の形で、魔よけの力があると伝えられています。
豆まきの頃、この本を読んでやっては保育園にやってくる鬼にヨモギ入りのだんごをぶつける我が園のこどもたちです。