ペルシャを思わせるエキゾチックな絵が、とても印象的な本です。
画家エド・ヤングが、著者ヨーレンの美しい文章のためにと新たに生み出した技法で描いたそうで、物語がより一層味わい深いものとなっています。
主人公は、美しく愛らしい娘ダニーナ。
娘を愛するあまり、悲しみや苦しみから遠ざけようとした父親は、広大な屋敷を塀で囲み、美しいもの楽しいものだけを与え暮らします。
そんなある日、塀を超えて“風”の歌が聞こえてきます。
「わたしは、風。〜いつもやさしいとはかぎらない。」
自分の知らない世界を歌う“風”の言葉に、ダニーナの心はしだいに…
風の言葉がとても深く、人生について考えさせられました。
閉ざされた世界とはいえ幸せを感じていたダニーナを、俗世に暮す私にはまさに深窓の令嬢に見え羨ましく思えたのですが、風は「悲しくつまらない人生」だと言うのです。
「知らない幸せ」と「知る苦しみと喜び」 どちらがより良い人生なのでしょうか?
幸せの感じ方は人によってさまざま、永遠のテーマかもしれませんね。
父親の行動も行き過ぎた愛情だとは思いますが、親の立場から見ると理解でき、ちょっと切ない気持ちになりました。
この本は、思春期を迎える頃の中学生から大人にお薦めだと思います。
でも、エキゾチックな絵と美しい文章にはテーマ抜きでも引き込まれるものがありますので、是非手にとって読んでみて下さい。