“石のスープ”といえば、ポルトガルの伝統料理。
民話も生まれ、ヨーロッパの各地方へ伝わったようで、石が釘になったり斧になったり。
東洋、中国にもこんなお話がありますよね(『しあわせの石のスープ』)。
この料理名は、現在もポルトガルでは「協力を集める為の呼び水」の比喩に使われるようです。
さて、フランス人のヴォージュラードさんは、どんなお話に料理したのかと読みました。
ある冬の夜に、年老いたオオカミが石を担いでめんどりの家へ。
暖炉で暖まらせてくれたなら、石のスープを作ってあげると持ちかけます。
もはや、ここでコワ〜!です。
年老いているとはいえ、“狡猾”の代名詞のようなオオカミです。
並はずれた好奇心と食への関心から、扉をあけるめんどり。
暖炉のあかりに照らされた、アップのオオカミの顔も不気味です。
鍋だ水だと、オオカミペースにめんどりが巻き込まれて行くと思いきや、次々の訪問者の出現で、オオカミのペースが…。
いや〜恐かった。
年老いて体も心もボロボロのオオカミは、和やかな温かい食事がしたかったのか?
冴える頭を使って、めんどりスープを食べる計画が失敗したのか?
終盤の「またきてくれますよね」のあひるさんの問いかけに、むっとしたまま、返事をしないオオカミ。
本来の計画が倒れ、心ならずも楽しい野菜スープをみんなと飲んでしまった自分への憤りでしょうか?
真意が掴み切れず、恐いんです。
読後も背筋が寒くなるようなホラー絵本です。
さすが、エスプリの効いた脚色だな〜と感心してしまいました。
大人が読んでも楽しい絵本だと思います。