お月見を題材にした絵本はたくさんあれど、この「14ひきのおつきみ」は、飛び抜けて秀逸です。
「14ひき」というのは、ねずみの大家族。父母、祖父母、プラス10匹のきょうだいねずみたちという構成です。
「14ひきのあきまつり」「・・・ピクニック」「・・・あさごはん」「・・・こもりうた」などなど、いわむらかずお氏はほかにも「14ひき」のシリーズをたくさん描いていますが、どれもみなねずみの大家族をとおして、自然の恵み、家族のきずな等々、忘れ去られようとしている「よいもの」を思い出させてくれます。
また、ねずみの低い視点から見た自然をダイナミックな構成で描いているのも圧巻です。
実際に、これらの絵本に描かれているような自然の懐に抱かれて暮らしていらっしゃるといういわむら氏ですが、氏の聞こえている葉擦れの音、風の感触、夕焼けの赤さが、そのまま伝わってくるような文章も、非常に調子よくて心地よいです。まるで詩を読んでいるみたいなのです。
見開きページいっぱいにたっぷりと描かれた自然を味わいながら、声を出して読んでいると、こころが穏やかにおさまってゆき、自然の恵み、うつくしさに、14ひきといっしょに思わず感謝のことばを言いたくなってきてしまうのです。
「おつきさん ありがとう、たくさんの みのりを ありがとう、やさしい ひかりを ありがとう」
夕暮れから月の出まで、刻々と変わってゆく空の色、森の色・・・・どのページもため息がでるほどのうつくしさと安らぎに満ちています。かくし絵であるかのように、各ページにさりげなく描かれている小さな鳥や虫たちを探すのも、子どもたちにとってはこの本を味わうときの楽しみであるようです。