時々絵本を読んでいて思うことがあります。それは父親の不在です。
子供が主人公の絵本に父親が描かれないお話が割りとあります。シングルマザーと子供。そのことに何か作り手の意図があるのでしょうか。父親不在があたりまえのように描かれるのは。
この絵本でもそうです。
「じぶんのはたけをつくりたい」と言い出す男の子エディと妹リリー。二人の子供のお母さんとおじいさんが登場するのですが、父親は出てきません。これはどうしてでしょう。
このことはこの絵本の内容と直接関係しないのでしょうが、少し気になりました。
さて本題。
自分の畑をつくりたいと始めたエディですが、もちろん畑作りは初めてですから、種や培養土を買うところから始まります。そして、庭の土を耕して、種を植えていきます。
まずまいたのは、えんどうまえ。その夜にエディがお母さんに読んでもらった絵本が『ジャックとまめの木』。なるほど、これはうまい手ですね。エディは自分がジャックになった気分です。
ここからが大変。エディはもっともっと種をまきたくなったのですから。
ひまわり、ナスタチウム、ブロッコリー、とうもろこし、それにかぼちゃだって。
芽が出た苗は畑に植え替え。いつの間にか庭の畑はたくさんの野菜におおわれています。
この絵本がいいのはここから。畑にあつまってくる鳥やら虫たちのことがきちんと説明されています。
例えば「はっぱやはなのしるをすうあぶらむし」。てんとう虫や虻の幼虫の大好物、と描かれています。ということは、てんとう虫は野菜を育てるにはとっても役に立つ虫だということです。
反対になめくじは畑を荒らす大敵。気になって仕方のないエディは夜になってお母さんと駆除します。
懐中電灯の明かりでなめくじをとるエディとおかあさんの姿はなかなか他の絵本ではみられない絵かもしれません。
こういうところをきちんと描くのは、野菜絵本の鉄則です。
この絵本の巻末には「野菜の育て方」として何種類かの野菜の育て方と種まきの方法などが書かれていて、入門本として少し大きな子供にもいいかもしれません。