タラという魚を中心に、世界の歴史を旅する絵本。
タラという魚の生態、海の仕組みや漁のできる場所について簡単な説明があり、いよいよバイキングがタラを利用して活動していた話にはいり、そこから世界の歴史が動いていく。
昔は今のような冷凍技術や保存方法がなかったので、タラは塩干しにしてかちかちに乾燥した状態で、各地にもたらされた。これは相当儲かったらしく、あちこちでタラを中心に、貿易が行われ、この魚は世界の歴史や経済を動かしていった。
その間、食べ方も実に様々あった。イラスト付きで料理法が紹介されているが、3〜4百年前の料理は、なんだかあまりおいしそうな感じがしないのが印象的だ。(失礼な!)
しかし、かつて大量に獲れていたタラは、乱獲により、今や枯渇しそうな状況だ。魚にとって最大の敵は人間。絵本の最期には、タラがいなくなってしまったら、他の生き物も困ることがしっかり書かれている。絵本を読む人たちに、未来を託す作者の気持ちが溢れている。
日本ではあまりなじみのない魚かもしれないが、私たちはタラではなく、マグロや秋刀魚、カツオ、鰻など他の魚でもって、想像してみたい。むやみに獲りすぎて絶滅した動物は数知れず。何かの行事などで無駄に廃棄される食糧として、魚も含まれている。
果たして今のまま、魚を食べつくしてしまっていいのだろうか?
環境や将来について、考えさせられる絵本だ。
だが、説教臭くなく、横に長い迫力ある画面でたっぷりとユーモアのある絵を楽しみながら、自然に歴史や環境について学べるよい本だと思う。大人が読んでも面白いので、どなたにも勧めたい。特に歴史や魚の知識は必要ないので、世界史が苦手だった人もぜひご一読下さい。教科書よりも面白いことを請け合います。