『星新一ちょっと長めのショートショート9』(理論社)。
表題作である「親友のたのみ」をはじめとして、11篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
2024年のベストセラーに名前があがった雨穴さんの『変な家』は、不動産ミステリで映画化もされ大ヒットとなったが、家というそこにあって何の不思議にもないはずのものをミステリ仕立てにした面白さの作品でもあった。
星新一さんのこの巻にも、家をテーマにした面白い作品が収められている。
そのひとつが「一軒の家」。一人の青年が世をはかなんで森の中のはいって見つけた一軒の家。誰もいないはずが、深夜に何故か物音がするではないか。青年は逃げ出してしまう。そのあとも、この家に泊まろうという人が現れるたびに、不気味な現象が起こる。こんな家にも買い手がつくが、やはり怪奇現象が起こる。
その理由が最後に暴かれる。そこに現れたのは、未来からやってきた男。実はこの家が未来のえらいさんの公邸になるから守られていたというオチは、さすが星さんならでは。
もう一作、「上司の家」はオカルト的なショートショート。家に現れる怪奇現象をなんとかごまかそうとする上司一家の話。
考えてみたら、家って「変」がいっぱいかも。