吉田さんの「絵本 アフリカのどうぶつたち」シリーズは、絵の素晴らしさといい実際の話に基づいていることといい、解説に走らず見るものに委ねるようなストーリーといい、とにかく凄さを感じています。
主役はゾウですが、ゾウの一群が主題。絵本の中はひたすらゾウの集団の行動と、行進の遠景。手前側に、ライオンがいたりジャッカルがいたり、それぞれのドラマを重ねながら実写さながらですが、映像以上に奥の深さと説得力を感じました。
ゾウは集団で行動するのでしょう。思いやりのある動物なのでしょう。仲間の死を思いやることは、野生動物には想像できないことですが、この絵本はゾウを擬人化した物語ではありません。
助け合って生きていくゾウの習性、一列に隊列を作って行動すること、事実に裏付けらた話だから淡々とした物語ではありますが、絵の中に思いを込めた象徴性を感じます。(たとえば、傷ついたゾウの描き方、ほとんど見落としてしまいそうな遠景の中のゾウの骨、小さな虫の中を進むゾウの躍動感と白いだけに見える風景の中の虫の実存感。)
キバのある骨と、キバのない骨。傷ついたゾウ。
象牙のためにゾウ狩りをするハンターたちは姿を見せないし、解説もないけれど、何度もこの絵本を読み返すうちにたどりつくだろうという奥深さです。
読み聞かせというより、親子で野生王国を勉強というよりも体感できる絵本です。
なんとなく、シリーズを全部読んでみたくなりました。