町田尚子さんの描く「うらしまたろう」です。
まだまだ10代半ばくらいの年に見えます。
もともと町田さんの絵はつるっとした感じの人物画なので、お肌がとてもきれいな印象でした。
助けたウミガメもきれいな色をしていました。さすが乙姫が化けていただけのカメです。
この物語を作るにあたっての世界観(竜宮のイメージとか)は、再話者の山下明生さんと決めたのでしょうか。
他の「うらしまたろう」の作品と比べると、乙姫が見せてくれた4つの窓(扉)の向こう側の四季の世界が日本じゃないイメージでした。
竜宮の服装も日本的ではなく(中国)大陸のものっぽかったです。
山下さんのあとがきで、この「うらしまたろう」は多くのひな型の中から、中世に書かれた「御伽草子」の物語を基にしているそうです。
なので、乙姫がたろうに渡した“玉手箱”は三段構えで、
一段開けるごとに違う変化をもたらす設定になっていました。
そして、ラストはお爺さんになって消えるパターンではなく、鶴になって飛んでいってしまいまうというオチで終わっています。
これはこれで幻想的な終わり方ですし、カメを助けるといういいことをしたはずのたろうが、お爺さんになってしまったり、チリとなって消えてしまうより温かみのある終わり方のような気がしました。
細かい描写もなくはありませんが、町田さんの絵は遠目がきくので、読み聞かせにもお薦めできます。
高学年以上ならブックトークで、いろいろなパターンの
「うらしまたろう」を紹介してあげるのもいいなぁと、思いました。