チイばあちゃんは、何でも、古い机の一番下の引出しに、しまい込むクセがあります。
この日、チイばあちゃんは桜色の毛糸で素敵なベレー帽を編もうと思っていたのに、どこを探してもかぎ針がありません。そこで、猫のとらたに聞いてみると、机の引出しがにおうというのです。
「あそこならちゃんとみたわよ。でも、なかったの」
「おくのおくまでみたの?」
そこで、チイばあちゃんはもう一度引出しを見てみることにしました。
その引出しはどんどん伸びて、中からいろいろな物が出てくるんです。とうとう壁に穴を明けて外にまで伸びていきます。
ありっこない話だけど、引出しが伸びる分、チイばあちゃんの思い出がいっぱい出てくるようで、いいなぁと、思いました。
かぎ針はやっぱり、「おくのおく」にありました。
それで、伸びてしまた引出しがどうなったかというと、外で遊んでいた子供達が集まってきて、その子達に欲しい物を分け与えてあげた分ちぢんでいきました。
こんな不思議なことが起こるなんて、誰の魔法でしょうね。
ちなみに、絵はあの「ぐりとぐら」のやまわきゆりこさんで、ぽちゃっとしたチイばあちゃんと、かわいい猫のとらたを描いてくれています。