とてもインパクトのある作品である。
題名からしてドキッとするものがあるが、絵のタッチも独特である。モノクロの絵と手書きの文字のバランスも絶妙。
長谷川君は、幼稚園の時にお母さんの引く乳母車に乗って、やって来た。赤ちゃんの時に、あるメーカーのヒ素入りミルクを飲んだことで、体が弱く、何をやっても友達のようにうまくできずに、へたってしまう。おまけに鼻はたらすし、歯はがたがた、手足はひょろひょろなのだ。
そんな長谷川君のことを主人公である男の子が、「きらいや」と、何度もつぶやくのである。そんなことを言っても、山登りに行きたいと言えば、連れて行ってあげるし、途中でへたった長谷川君をおんぶしてあげるのだ。なんだかんだ言っても、長谷川君のことをとても気にかけていることが伝わってくるのである。いつもハラハラしながら、心配で目の隅で姿をおって、何かあると、すぐに助けに走る。だから一緒にいると、優しい僕は、しんどくなって「きらいや」とぼやいてしまうのだろう。
絵本の中の、長谷川君とは、作者自身の子供の頃の姿である。体験談だけに、なおさら強烈な印象を受けます。