大人でもワクワクドキドキしながら読める本です。押し入れがモチーフなので、絵は全体的に黒を基調とした暗い感じなのですが、それだけに、ページをめくるとパッと目の前に広がる数少ないカラーページの美しさは絶品です。
悪いことをすると押し入れに閉じ込めるという保育士さんのやり方を、このお話は決して肯定しているわけではないんですよね。
押し入れに入れられた二人の男の子は意地でも謝ろうとしません。それは、出して欲しければ謝れという先生の言い分が理不尽だということを理屈でなく肌で感じているからです。
彼らが謝るのは押し入れから出た後、しかも、先生にではなく、迷惑をかけた友達に対して自分から謝っています。押し入れの恐怖に打ち勝った英雄ではあるけれど、だからといって彼らがやった悪いことをうやむやに終わらせないところがいいですね。
年配の先生も、押し入れに閉じ込めるというやり方に賛成しているわけではないけれど、まだ未熟な若い先生がどうやってこの場を収めるのか、口を出さずに見守ろうとしている態度がうかがえます。そういった空気もこの話を読んだ子どもたちに伝わるといいなと思います。
童心社のホームページには、この絵本の製作エピソードのページがありますよ。