この本には、何か、無骨な老人のような気配があります。こつこつと働いて、人生の山や谷やトンネルを幾つもくぐりぬけ、風雪に耐えて生き抜いてきた人のことばのように、シンプルだけれどどっしりと胸に響きます。息子に読みきかせながら、いつも、これは物語というより、詩なのだな、と思います。
こういう、幾分地味なタイプの本を自ら手に取ることは、ウチの息子の場合、残念ながらあまりありません。けれど、読んでやった時の集中力は、軽い内容のものと比べると段違いです。幼いながらも、何かを感じてくれているのだな、と思わされます。
繊細な線のストイックな線画が、この本によく合っています。飾りをそぎ落とした、素のままの本という印象です。また「ぱふぱふ」「ちゃぐちゃぐ」という日本語では使わない擬音が、子供にはとても楽しい響きに聞こえるようで、読みきかせる時にはよく一緒に真似してくれます。でも、この擬音がますますこの本の孤高な印象を高めている、というのが、大人の私の感想です。