手のひらサイズの絵本。「ふるのかしら、ふらないのかしら」――。迷っていた女の子は結局、赤い傘を持ってお出かけします。すると雨が降り出して、動物たちが雨宿りにやってきました。
お話の内容は何気ないできごとを描いているだけですが、子どもの好きなものがたくさん詰まっている絵本です。まず、大人の手のひらに乗る小さなサイズが子どもに親近感を与えるでしょう。次にかわいらしい小さな動物たち。彼らは1から4までの数字(こいぬが1匹、こねこが2匹、にわとり3羽に、こうさぎ4匹……)で登場します。ここも子どもの好きなところ。そして、不思議な傘の存在。動物の数が増えるにつれ、どんどん大きくなっていくのです。
表紙は、やわらかいサーモン・オレンジ色。本文の赤い傘はピンクがかった優しい赤で、ふんわり読者に向かって飛んできそうな色です。ちょっぴり素人風の鉛筆・ペン画にこの傘の赤が生き生きと映り、なんともいえない温もりを生み出しているのでしょう。
作者の「目に見えるものをモデルにスケッチするのではなく、心に感じるものを見る」という言葉に、この絵本のすべてが物語られていると思いました。