まず、この本は最後のイラストのページを抜くと123ページしかありません。しかも、各所にイラストが散りばめられているし、
1ページは12行しかないし、
文字数はページから想像するよりかなり少ないです。
ですから、行と行のスペースがいい感じに空いていて、本が苦手なお子さんでも、気楽に手がのばせる作品では?と、思いました。
その上、どういう構造になっているかはわかりませんが、同じような大きさの単行本に比べて、とても本が軽く作られています。
このお話は、主人公のかんこの、小学校3年生から4年生の夏くらいまでの物語となっています。
表紙絵にもう一人描かれているのは「風助さん」というお老人で、ある日川原の平べったい大きな石に座っているところをかんこが見つけて“拾ってきた”おじいちゃんです。
素性がはっきりしない「風助さん」と、かんこのうちの人たちはなんだうまが合い、今どき珍しく家族のように何日か暮らします。
その過程が無理がなく、読み手が納得できちゃう流れで、作者の手腕のすごさを見せらつけられました。読みやすい無理がない設定で、要所要所軽いジョブのように『笑い』があって、楽しませてくれます。
タイトルの『シジミの食卓』というのも、物語にとても大切な場所で、
自然や虫に興味のあるお子さんにもお勧めできる内容になっています。
主人公のかんこは女の子ですが、
かんこにはお兄ちゃんがいて、彼がすごく素敵なパイプ役として物語の進行を支えてくれている気がしました。
ですので、男の子が読んでも違和感なく、楽しく読めると思います。
個人的には、子育て世代の30代〜50代の親たちにお勧めしたいです。
児童文学作品で、あくまでも子ども目線で描かれていますが、
ぜひ、読んでみてください。
「風助さん」という架空の親を持ったことで、
かんこのお父さんは少し前に亡くなった自分の父親との空白を埋めていきます。
中年期に差し掛かると、どうしても自分の親の看護(介護)をしたり、見送らなければならなくなったりします。そんなときの息子(子ども)としての葛藤が物語の中に見え隠れ、
かんこのお父さんと「風助さん」のやり取りを読みながら、
読み手の私も一緒になって、いろいろな想いが寄せては消えていきました。
素敵な作品に出会えて幸せです。