季節や天気によって色んな表情を魅せる“雲”が題材です。
この作品を読んで、僕が小学生の時、友達の女の子が言っていたことを思い出しました。
「わたし、雲をみて物語を考えるの」
作者の富安陽子さんも、きっとそんな少女だったのでしょうか。
当時の僕は、どういうことか理解できず、ただすごく創造力があるんだなと感心するだけでした。
大人になった今は、やはり空想まではしませんが、夕焼け空をぼーっと眺めるのが好きになり、たまに「あの雲は何かに見えるね」と息子と話すことはあります。
また、掴みどころのない雲を、実写のような絵で描ける人はすごいっ!と思うようになりました。
この作品の見所は『くだもの だもの』の山村浩二さんの絵にもあります。写実的でインパクトが強いけれど、ほのぼのと親しみやすい画風が特徴的です。今回の主役は雲なので、キャラクターたちは一歩下がって、控えめに描かれているように映りました。
僕の中で雲といえば積乱雲(にゅうどう雲)です。りゅうの棲家と表現され、見た目にも力強く、怖いと感じるほどの存在感。でもなぜか目を惹きつけて放さない魅力があるんですよね。
また、朝焼けに染まるカーテン雲も、原画で見てみたいと思うほど綺麗な描写です。
“ちいさいかがくのとも”として見る以上に、価値のある作品だと思います。