読み終えて、心に突き刺さるものを感じました。
それを感動というのか、何にそう感じたのか。考えると、この絵本の絵に違いはないのだけど、美しさというのではなく、優しさというのではなく…。
繊細な鉛筆画で決めの細かい、絵が続きます。手だったり、足だったり、人の顔も写真のように鮮明でありながら、どこか乾いているのです。目はこちらを見ていません。決して笑ったり怒ったりしていません。
実は、この絵が物語りをとても伝えていることに考えが及んだ時に納得できました。
この絵本は語っているのではなく、見せているのです。
ハルばあちゃんの一生。
生まれて、育って、知り合って、死にあって、別れがあって…。
でも、全てを受け入れているハルばあちゃんの手。
これはすごいことです。小説ではとても饒舌な山中恒さんの抑えに抑えた淡々とした物語を、これほど饒舌に語りつくしているのですから。
しかも、文字の赤と、モノクロームの絵にただ一つ添えられた魂の赤。
この絵本は芸術です。
絵本の表紙の手が好き。背面のハルとユウキチの幼い頃の笑い顔が好き。
そして、その二つにはさまれた本の中に、ハルとユウキチの笑顔はない。
もっと奥深い、社会、歴史、人生を包み込んで、この絵本は完結しています。
悲しさや、苦しさや、寂しさや、多分だれもが感じる人生の断片を「ユウキチさん、わたしはあんたのおかげでずっとしあわせだったよ」と、ユウキチ亡き後で一人盆踊りで踊るハル。
背面に「読んであげるなら5才から、自分で読むなら小学校初級から」ってあったけど、これって児童書?