この表紙の何と強烈なこと! 色使いといい、この目つきの悪さといい、
「アイザックっていったい何者?」と、思わず手に取ってしまいました。
皆さんはこのアイザックの正体、いったい何だと思われますか?鬼の角のようにとんがった耳、つり上った目、真っ黒な顔…!特別支援学級の子どもたちは、「きつね」、「おおかみ」、「かいじゅう」…などと答えていましたが、実は、アイザックの正体は<黒い犬>!でも、こんなに目つきの悪い犬なんて見たこともありません。1ページ目はこんな文章から始まります。「このこは くろいぬ アイザック。いじわるばかり するものだから ともだちが ひとりも いないのです」
そんなアイザックのお隣に、わにのオーリーが引っ越してきました。アイザックは、いつものいじわるでオーリーを追い出そうとします。ところが、ドアに釘を打って外に締め出そうとすると、しっぽで難なくドアを壊して入ってきてしまうし、ドラムをたたいて騒ぎたてると、
「すてきなしゅみだね、アイザック。ぼくもおんがくがだいすきだよ!」
と、マラカスを振りながら踊り始めるしまつ。 ならば…と部屋を泥だらけにすると、
「わあい!おうちのなかで どろんこあそびが できちゃうね!」と、大喜びのオーリー。
アイザックだって どろんこあそびが だいすきです。「ぼくも いっしょに あそぶ――!」
と、ついにアイザックはオーリーと一緒に泥んこ遊びを始めてしまいます。ところが、夢中で遊んでいる最中、「事件」が起こってしまいました。アイザックがうっかり、オーリーの大事なカメラを壊してしまったのです。この作者のすごいところは、色と空間の使い方が、物語と連動して絶妙なのです。カメラを壊されたオーリーの姿を、見開き2ページの白地の中に、小さく淡い黒でポツンと描き、「オーリーはなにも いいませんでした」とだけ書いています。真っ白な空間が、オーリーの心の空白、悲しみ、辛さ、落胆…そんなものすべてを表しているのです。次の見開き2ページは、雲間から見える儚げな三日月と、しょんぼりとお風呂に浸かっているアイザックの絵です。アイザックの申し訳なさや自責の念、どうしたら償えるのか…と思い迷う切ない思いが描かれています。文章はなにもありません。絵が文章以上に雄弁に、アイザックの思いを表しています。さて、アイザックが考えたお詫びの方法というのが、これまたとっても素
敵!是非手に取って、自分の目で物語のハッピーな終わりを確めてみて下さい。にんまり、ほっこりすること、間違いなし! 私の、今一番のお気に入り絵本です。