最近注目のひがし ちからさんの記念すべき第一作目の作品。
題名のえんふねとは、幼稚園の送迎用の舟のこと。
あまりに自然に描かれているので、何処かに存在しているの?と思ったのですが、良く考えてみればあり得ない話。
その設定がひがしさんの魅力であり、既にそれだけでこの絵本の成功は約束されたようなもの。
それだけ、魅力的な設定だと思います。
ひがしさんは、幼稚園の美術教諭をされているとのことなので、モデルには事欠かないのでしょう。
物語は、主人公のまきちゃんが、えんふねの乗り場で待つシーンで始まります。
まるで送迎バスを待つような違和感のないシーンで、もうひがしワールドに誘われてしまっています。
船頭さんと先生と幼稚園の友達と一緒にふねに乗っているシーンは、楽しさ溢れるもの。
空から俯瞰する図式は、ひがしさんならではの手法で、いろんな人の風景は見応え一杯。
途中、橋の上からトマトを篭で貰ったり、舟とすれ違ったりとエピソードも満載で飽きさせることはありません。
そして、途中、丸太が川を塞ぐというアクシデント。
それに対して、クレーンで吊り上げるというこれこそあり得ない対処方で難を逃れるのですが、まるで舟で空を飛んでいるように見せるページは圧巻。
現実と空想の境目を感じさせないひがしさんの力量に、感嘆することしきりといったところでしょうか?
デビュー作にして、すでにひがしワールド全開。
遠近法を駆使した構図、空から俯瞰するシーン、何度見ても新しい発見がある遊び心溢れたサイドストーリーの数々と、その絵の楽しさは、既に孤高の完成度の高いものになっていると思います。
幼稚園のお子さんに読んだら、虜になってしまうこと間違いなしの作品としてオススメです。