飼われていた猛獣が、街に逃げ出して、やむなく銃殺されてしまう痛ましいニュースが、時々ありますが、この物語は、そんな逃げたとされる猛獣の視点から描かれているところが、新鮮で、いろいろ考えさせられます。
いつも動物園にいて、礼儀正しく、人気者のごきげんなライオン。ある日、飼育係に鍵を閉め忘れられて、開いていたことから事件が起こります。でも、ドアが開いていたら、人間だって、外に出てみたくなりますよね。ここで、重要なことは、ライオンが無理矢理逃げたのではなく、ドアが開いていたので、自分から出掛けて、いつも会いに来てくれる街の人たちに、お返しに会いに行こうとしただけだということです。
ところが、街の人々は、いつもと全く違っていました。いつもお行儀の良い人達が、誰も挨拶一つできないばかりか、大慌てで逃げ出してしまうのですから・・・。
ライオンの終始、鷹揚とした態度が、どこかとぼけた印象に映り、おかしいところです。
ただ一人、いつもと変わらず応対してくれた子供が、なんとも頼もしく、優しくて、尊敬してしまいました。
子供も、大人も楽しめるごきげんな絵本です。