「昔々あるところに…」でおなじみのスタンダードな昔話は決まって3人称、いわゆる「天の声」でえがかれています。3人称から1人称へ。客観から主観へ。
もしあの童話の主人公が自らの口で語ったら。
その額にカメラがついていたら――「1人称童話」はそんな発想のちょっと変わった絵本です。
えがかれるのは、3人称のナレーションでは語られない、主人公の「たとえば」の胸の内。
他者である主人公の視点から物語を体験する1人称童話は「まなざしと気持ちの絵本」といえるのかもしれません。
「もしきみが桃太郎なら?」本の最後には、そんな問いかけが待っています。
この本の大きな楽しみのひとつは読んだ後にあります。お子さま自身が「もし自分なら」を考える。
たとえば旅立つとき、鬼と向き合ったとき、自分ならどんな気持ちになるだろう。
もちろん正解はありません。
物語の中にその身を置いて、そこに現れる「心」や「行動」を自由に想像してみる。
それ自体がお子さまにとって新鮮な体験となることと思います。
まずは「桃太郎」から。以降「シンデレラ」「浦島太郎」へ。
ひとつの物語がお子さまの豊かな滋養となりますように。