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- ためしよみ
絵本紹介
2022.03.25
極限の地で出会ったのは、ジャコウウシの群れだった……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『ほっきょくで うしをうつ』。探検家・角幡唯介の実体験を阿部海太が大胆に絵本化。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
探検家・角幡唯介の実体験をもとに描かれたこの物語。「殺さなければ生きていけない」。聞けば納得してしまいそうになるその言葉。けれど、実際に直面したとしたら。想像することすら簡単ではないその状況を、画家である阿部海太が大胆に描き出す。
あれは……まちがいない、ジャコウウシの群れだ。
白と黒しかない世界に浮かびあがるのは、生きるものの息づかいと、命のやりとりの瞬間。こちらを見る眼差しであり、死にゆく獲物の鳴き声だ。読者はその迫力にたじろぎながらも、目が離せなくなってしまうのだ。
死をめぐる絵本「闇は光の母」シリーズの1冊として刊行されたこの絵本。忘れられない光景として、しっかりと記憶に刻みつけられていくのだろう。
存在を感じることができる
生きることと、死ぬこと。子どもたちがどうしようもなく惹きつけられていくそのテーマ。普通に生活しているだけではなかなか気がつくことの出来ない、緊迫した境界線。それでも絵本を読めば、うしの親子の存在を感じることができ、旅人の心の迷いを体験することができるのだ。そこにあるのは「答え」ではないけれど。これからも考え続けていく手助けとなってくれるであろうこの絵本、余計な説明はいらないのかもしれませんね。
この書籍を作った人
1976(昭和51)年 北海道生まれ。早稲田大学卒業。同大探検部OB。新聞記者を経て探検家・作家に。チベット奥地にあるツアンポー峡谷を探検した記録『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。その後、北極で全滅した英国フランクリン探検隊の足跡を追った『アグルーカの行方』や、行方不明になった沖縄のマグロ漁船を追った『漂流』など、自身の冒険旅行と取材調査を融合した作品を発表する。2018年には、太陽が昇らない北極の極夜を探検した『極夜行』でヤフーニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞を受賞し話題となった。翌年、『極夜行』の準備活動をつづった『極夜行前』を刊行。2019年1月からグリーンランド最北の村シオラパルクで犬橇をはじめ、毎年2ヶ月近くの長期旅行をおこなっている。
この書籍を作った人
1986年生まれ。埼玉出身。東京藝術大学デザイン科卒業後、ドイツ、メキシコに渡る。2011年より東京にて絵画と絵本の制作を開始。翌2012年に本のインディペンデント・レーベル「Kite」を結成。2016年夏より拠点を神戸に移す。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。