箱のなかにはいっているのは?!
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絵本紹介
2023.05.29
みどころ
「ガレット・デ・ロワ」をご存知でしょうか? 日本語にすると「王さまのお菓子」、フランスの新年に欠かせない伝統的なお菓子です。ガレット・デ・ロワのお楽しみは、このお菓子に隠されている「フェーヴ」という小さな陶器の人形が誰にあたるかということ。フェーヴを引き当てた人は、その日、王さま女王さまとなり、紙でできた王冠を被って皆から祝福されるのです。こちらは、そんな幸せなお菓子をめぐる物語です。
ここはケーキ屋さんの調理場。パティシエのブランさんが、フェーヴの小さなお人形ミリーに声をかけます。「さあ、いっておいで。きみはだれをしあわせにするんだろうねえ」。ミリーはアーモンドクリームがたっぷりつまったパイの中に入ります。わたしが誰かを幸せにすることができるんだろうか? ミリーは思い悩みながらも、ある家族の食卓へ。ミリーの優しい気持ちは、周りの人の心に伝わり、やがて奇跡を起こします。
作者は「すみれちゃん」シリーズ(偕成社)や『しろうさぎとりんごの木』(文溪堂)などの著書の他、数多くの絵本の翻訳も手がける石井睦美さん。イラストを担当するのは、『レミーさんのひきだし』(小学館)など、異国情緒溢れるレトロなイラストが人気のくらはしれいさんです。感情豊かな優しい文章と、大人っぽく甘い雰囲気のイラストがぴたりと合って、気品ある作品に仕上がっています。
物語はもちろん、隅々まで趣向を凝らした作品です。表紙見返し部分はまるでお菓子の包紙のようですし、目をひく絵本の帯はなんと王冠になります。また、カバーをめくってみてください。また違った絵が現れますよ。ぜひ手にとって確かめてみてくださいね。
この書籍を作った人
神奈川県生まれ。『五月の初め、日曜日の朝』で毎日新聞小さな童話大賞と新美南吉児童文学賞を受賞。他にも、絵本の翻訳『ジャックのあたらしいヨット』(産経新聞出版文化賞)、『皿と紙ひこうき』(日本児童文学者協会賞)、駒井れん名義の『パスカルの恋』で朝日新人文学賞を受賞。著書に「すみれちゃん」シリーズ、『キャベツ』『兄妹パズル』『卵と小麦粉それからマドレーヌ』『群青の空に薄荷の匂い』、『おにんぎょうさんのおひっこし』『あそびましょ』『しろうさぎとりんごの木』、絵本の翻訳に『美女と野獣』など。
この書籍を作った人
岐阜県在住。雑誌、一般書籍の装丁画・挿絵やオリジナル雑貨のイラストなどを手掛ける。絵本に『レミーさんのひきだし』(作・斉藤 倫、作・うきまる/小学館)、『王さまのお菓子』(作・石井睦美/世界文化社)がある。
誰かを幸せにしてあげたいと願う気持ちが育まれるお話
「ガレット・デ・ロワ」なんてオサレなお菓子を食べさせたこともないから興味ないかな、と思ったのですが、表紙のお菓子の絵がおいしそうということで「読んで! 読んで!」と強くリクエストされ、一緒にページをめくりました。すると、いきなりパイの中に突っ込まれるお人形目線でお話が始まり、子供たちはハートを掴まれっぱなし。ミリーが女の子のピースに取り分けられるのか、ハラハラしながらお話を聞いていました。
ちっちゃなお人形が「誰かを幸せにしてあげられるのかしら」と真剣に思い悩む姿に、私は一番心を奪われました。当たりくじ自身の思いは確かにそうかもしれない、と新鮮に感じましたし、そんなふうに誰かの幸せをていねいに願って作られたお菓子をいただいてみたいものだと思いました。
(カオリンゴカモシレナイ さん)
フランスの素敵な風習
フランスに、私たち親子にも大事な友達がいて彼らもこのお菓子を食べているのだろうかと思いを馳せました。
少しくすんだ色彩のイラストが、いかにもフランスっぽい空気を醸し出している、素敵な絵本です。
このパイのことは以前から知っていましたが、「フェーヴ目線」なのがお話として新鮮です。
誰かを幸せになんてできるのか自信がない、責任重大だと思っているフェーブの気持ちもなんだかわかるような。
私たちも、しっかりしあわせなラストを味わうことができました。
そして、うちの子どもも登場人物の男の子のように「ふさわしい人に幸運を分けられる」そんな人になってほしいと思いました。
(だっこらっこさん)
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