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インタビュー
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2024.01.11
『とりかえっこ とりかえっこ』や『とらんぽりんぽーん』、『おおきいの ちいさいの』など、見て、読んで、触って、感じるという絵本の魅力がたっぷりつまった作品を、次々と生み出してきたふくだじゅんこさん。特に魅力的なのが、手触り感のある絵と、登場するキャラクターたちの感情豊かな表情です。
そんなふくださんの最新作『ぶたくんの とどかない とどかない』は、かゆみにもだえるぶたくんと、お手伝いしてくれる動物さんたちとのやり取りがほほえましい、ユーモアたっぷりな作品です。作品が生まれたきっかけや絵のこだわりなどを、ふくださんにお伺いしました。
出版社からの内容紹介
背中がかゆい、ぶたくん。でも、手がとどかない! ぞうさんやきりんさん、かめさんも手伝ってくれるけど、ちがうちがう、そうじゃない! そこへ、なまけものくんがやってきて…!? ぶたくんの表情や動きがかわいい、ユーモア絵本。
この人にインタビューしました
武蔵野美術短期大学デザイン科卒業。グラフィックデザイナーを経て、絵本づくりを始める。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選(2000年〜2002年)。第5回ピンポイント絵本コンペ最優秀賞受賞。作品に『とりかえっこ とりかえっこ』『とらんぽりん ぽーん』『でんぐり ごろりん』『おつきさまは まあるくなくっちゃ!』『おおきいの ちいさいの』『おばあちゃんスプーン』『ぶたくんの とどかない とどかない』『こぐまくん、ないしょだよ』(大日本図書)、『ケッセラセラいちざ』(フレーベル館)、『ちょきちょきブロッコリーさん』(PHP研究所)、『かきごおり おまちどおさま』(WAVE出版)などがある。
───『ぶたくんの とどかない とどかない』は、ぶたくんの表情の変化やおもしろい動き、予想外の展開も加わって、読んだ後にもう1回読みたくなる魅力があります。『ぶたくんの とどかない とどかない』を描いたきっかけを教えてください。
ふくだ:きっかけは、実際に背中がかゆくなって手が届かなかったことなんです。もちろんそんなことは今までに数えきれない程ありましたが、どういうわけかその時は、テーブルの角に背中を押しつけたりしながら、「もし、ここに動物が来てくれて背中をかいてくれるなら誰がいいだろう?」と妄想が始まってしまって……。テーブルで背中をぐいぐいしながら「むむ、これは絵本になりそうだぞ」と思う自分がいて。それから夢中で「ぞうが来たら? きりんが来たら? あれはどう? これは?」と、どんどんアイディアが膨らんでいったんです。
ちょうどその頃、次に作る作品は、自分なりの動物の姿を追求してみたいと思っていたところでした。リアルというのではなく、その動物らしい姿、自分が心地良いと思える形を探して描いてみたい! と。このおはなしなら、それができるのではないかと思いました。
───かゆいところに手が届かなくて、もだえているぶたくんの気持ちがよく伝わってくる、おもしろい表情がいっぱい登場します。ぶたくんの表情を描くときにはどんな工夫をしましたか?
ふくだ:ぶたくんの表情を楽しんでいただけたなら、とてもうれしいです。たぶん普段の生活の中でいろんな人の表情を目にすることで、無意識に自分の中にたくさんの表情がインプットされているんだと思います。小さな子を見ていても「へえ〜、こんな表情するんだ」と驚かされることが多くて、すごく楽しいですね。本当に見飽きないです。
このおはなしが浮かんだ時には、脳内でもう、ぶたくんの表情は見えていましたが、形にしていく中では、鏡の前でいろんな顔をしてみたり、いろいろな人の表情を参考にしました。また、顔の表情と同じくらい身体の表情を大切にしたいと思っています。手の表情や足の置き方、背中の丸め方など顔以上に気持ちが伝わると思うので。これも、いろいろなポーズを自分でやったり、ぬいぐるみにポーズをとってもらったりしています。
───ぶたくんの背中をかいてくれる動物たちが5匹登場しますが、その5匹を選んだ理由を教えてください。
ふくだ:この絵本に登場する動物たちは、妄想した時に次々と自然にやって来てくれたんです。背中がかゆくてもだえているところに、まずは、ふっとぞうさんが現れて。「いや、ちょっと違うな」となったところに、きりんさんがやって来たけれど「うーん、これもうまくいかないぞ」と。そして、なまけものくんのなが〜い爪を思い出して「これだ!」となりました。なので、最初の段階で登場する動物については、ほぼ迷いがなかったんです。
ふくだ:ただ、かめさんだけは途中からの登場でした。最初の案では、へびさんがぶたくんの背中に乗って「くすぐったい!」というシーンだったんです。ただ、それだと、ぞうさんが鼻でかいてあげるシーンと近いイメージになってしまうので、編集者さんと話し合って変更することにしました。いくつか浮かんだ中で、ぶたくんとのやりとりがハッキリとおもしろくイメージできた、かめさんになりました。編集者さんがリクガメを育てていらっしゃるので、そのリクガメ愛をひしひしと感じたことも関係あるかもしれません。
───ふくださんの描く絵は手触り感が伝わってくるような絵ですが、『ぶたくんの とどかない とどかない』で使用した画材はなんですか?
ふくだ:アクリル絵具で描いています。乾きがはやくて、どんどん塗り重ねることができるところが自分に合っていると思います。色数も多いですし。アクリル絵具を塗り重ねて、好きな質感を出した紙を使ってコラージュしています。切ったり貼ったりするのが大好きなんです。
描く前にあまりキッチリ決めないで、とりあえず色を塗ってみてからどうするか考えたり、洗うのが面倒というズボラな理由でコピー用紙の切れ端をパレットがわりに使ったりと、結構いいかげんにやっています。
───『ぶたくんの とどかない とどかない』を制作する際に苦労したこと、反対に楽しかったことを教えてください。
ふくだ:苦労と感じることは全くなかったですが、先程お話ししたように自分なりの動物の姿を描いてみたいと思っていたので、私の力不足もあり、なかなか「これだ!」という自分の形にたどりつかなかったんです。
特にぞうさんが難しかったですね。「こんなもんかな。ちゃんとその動物に見えるし、これでいいかな」と妥協した絵は編集者さんにちゃんとバレて(笑)。その度に、「もっとできると思います!」と力強く励ましてくださって。立ち止まりそうな時には、いつも一緒に解決策を見つけてくださって。とても感謝しています。
ふくだ:この絵本は、余白がたっぷりあるシンプルなものにしたかったのですが、シンプルゆえに、ひとりひとりの表情や姿形が「これじゃなきゃ!」というものでなければ伝わらないという怖さがありました。それができたかどうかはわかりませんが、今回はそれに挑戦できてとてもいい経験になりました。
頭の中にいた動物たちが、ひとりひとり色彩をまとって形になって目の前に現れてくるのはしみじみとうれしくて、本当に楽しかったです。
───シンプルな分、擬音などの文字の入れ方もおもしろいと思いました。表紙のデザインもインパクトが強いですよね。ふくださんなりのこだわりがあったのでしょうか?
ふくだ:デザインに関しては、イラストだけお渡しして、あとはデザイナーさんに全てお任せしたんです。作りたい本のイメージは編集者さんと共有できていたので、お好きなようにやっていただければ間違いない!という確信があって。出来上がってきたデザインを見た時は、もう、それを超えるうれしさでした。
表紙は今回の案と別の案があったのですが、どちらも捨てがたいデザインで。選ばなかったもう1案は、攻めているというか、オリジナリティー溢れるデザインで、うれしい驚きがありました。うんと昔ですが私はグラフィックデザイナーだったので、デザイン魂がムズムズと刺激される感じで。最終的に「長く一緒に過ごす相棒としての絵本」として今回の表紙になりました。
中面に関しても、書体もレイアウトも想像以上に素敵で。文字も絵として成り立っているというか。デザインの力で自分の大好きな佇まいの絵本になって、原画を描いている時にはわからなかった感動がありました。改めて本という形の美しさを感じることができて、とてもうれしく思います。
───ふくださんが子どものころ、好きだった絵本はなんでしたか?
ふくだ:私が幼い頃は、今程絵本の種類もなかったですし、目にするものは日本の昔話や世界の童話が多かった気がします。
幼い頃は、父がひざの上に乗せて読んでくれました。擬音のところは、体を揺らしたり声色を使ったりして臨場感たっぷりに。『おむすびころりん』とか大好きでしたね。♪おむすびころりん すっとんとーん♪と一緒にうたうあのリズムが心地良くて。『こびとのくつや』も大好きでした。
おとなになってから、センダックの『まよなかのだいどころ』を読んで気づいたのですが、自分が眠っている夜中に誰かが起きていて何かしているというシチュエーションが好きなのかもしれません。安心感なのかなんなのかわかりませんが……。
あとは、おはなしそのものではなく、場面の描写に強く惹かれた記憶があります。ハッキリと覚えているのは、『イソップ童話』の「きつねとつるのごちそう」の1シーン。つるのくちばしが、硬いお皿にコツンとあたる冷えびえとした感触が大好きでした。どうしてあんなに惹かれたのか……挿絵が魅力的だったのかもしれませんね。
───最後に『ぶたくんの とどかない とどかない』を、親子でどのように楽しんで欲しいですか? 絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。
ふくだ:どのようにでも、自由に楽しんでいただけたらうれしいです。子どもさんが楽しんでくれたら、それはもううれしいですが、この絵本を囲んでおとなの方も一緒に「うーん、もう!でも、こういうことってあるよなあ」とクスッとしたりして、ちょっとだけ肩の力が抜けるような時間を過ごしていただけたなら幸せです。
構成:中村美奈子(絵本ナビ)