インタビュー
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2024.05.09
ロングセラー「うしろにいるのだあれ」シリーズ(幻冬舎)やカバのポポくんが活躍する「ポポくん」シリーズ(PHP研究所)など、かわいいタッチで子どもたちに大人気の絵本を多数手がけるaccototoさん。
新刊『じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ』は、accototoさんの持ち味でもあるかわいらしい雰囲気から一歩離れ、グッと落ち着いた、絵本の世界を味わえる引き込まれる作品です。自然を体感できる絵の描き方、「じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ」と繰り返されるフレーズに込められた思い、この作品が生まれるきっかけをうかがいました。
出版社からの内容紹介
桜の花びらが散り、サナギにそっとふれます。やがてサナギはチョウになり…。春から夏へ、夏から秋へそして冬へと季節の巡る様子を描く四季の絵本。「じゅんばんですよ」のフレーズが読み聞かせにもぴったり!
この人にインタビューしました
あきこ”acco”と、としお”toto”で accototo (アッコトト)。絵本、イラスト、壁画などを夫婦で制作している。おもな絵本に「うしろにいるのだあれ」シリーズ(幻冬舎)、「ポポくん」シリーズ、『まぜて まぜて』(PHP研究所)、『だれのあしあと』『いただきまーす』『ごちそうさま』(大日本図書)、『のぞいてごらん』などの「ごらん」シリーズ、『あいうえおりょうりめしあがれ』(イースト・プレス)、『そんなに みないで くださいな』(KADOKAWA)、『なにまってるの?』(文溪堂)、など。絵本はいろいろな国で翻訳出版されている。エッセイに『絵本作家の森のいえ便り』(幻冬舎)がある。
───新刊絵本の発売、おめでとうございます。accototoさんの作品はかわいいキャラクターとおはなしの面白さに、毎回ワクワクして読ませていただいています。『じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ』は、まず絵の美しさに目を奪われました。この作品はどのような経緯で生まれたのですか?
ちょうどコロナ禍の時期、仕事とは別に1ヶ月1冊の絵本のラフを作るという課題を自分自身に課していた時に作りました。限られた時間の中で作らなくてはいけないので、自ずとそのときに関心のあるものを掬い取るような感じで形にしました。
自然の豊かな地域で暮らしていると、四季の変化がよく分かります。雪がとけると顔を出すふきのとう、春の匂いが濃くなって、鳥たちが嬉しそうに鳴きはじめると虫たちが現れます。
毎年毎年、同じ時期に同じ順番で繰り返していく自然の営みを見ると、みんな、どうしてこんなにも正確に「その時」を知っているのだろうと不思議に思いました。まるでみんなが順番にバトンを渡して、季節をリレーしている様な感じがしました。それで絵本の形にしようと思いました。
───お仕事とは別に1ヵ月1冊のペースで絵本を作られていたなんて、すごいことですよね。そしてその中の1冊が今回このような形で私たちが手に取れるようになったなんてとても嬉しいです。『じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ』は、季節の移り変わりや時間の経過が強く描かれていますが、このような構成にすることは早い段階から決めていたのですか?
季節をリレーしていくおはなしにしようと思っていたので、最初からこのような構成にしようと、ちょうど1年のサイクルで考えてみました。1日の時間も季節も必ず循環しています。朝が来れば必ず夜が来ます。そしてまた夜明けを迎えます。春が終わっても、またいつか次の春が巡ってきます。絵本を通して、全体に緩やかな時間の流れを表現できたらと思いました。
───最初のラフから、表紙やタイトルもだいぶ変わっていったそうですね。どのような経緯があったのでしょうか。
表紙の絵とタイトルは、最初は一番シンプルな形にしていました。でも少しあっさりしすぎている様に思い、絵本の中に登場するくまの親子を表紙に持ってきました。
またタイトルもより絵本の内容に合わせて変えてみましたが、なんだかくまの親子の物語のような感じがしました。そこで絵本で描きたかった「季節のリレー」を見守っているような存在のふくろうを表紙にし、 本文の言葉「じゅんばん じゅんばん じゅんばんですよ」をそのままタイトルにしました。
───ラフを拝見すると、雨の場面や雪の場面も、最初の構図と大きく変わっていることに気づきました。最初のラフでは生き物に寄った構図になっていて、生き物たちにキャラクター(個性)があるようにも思いましたが、その後のラフでは、生き物のビジュアルがぐっと本物に近づけられていて、より引きで空間(風景)を味わう内容に変わっているように感じました。どのようなきっかけで、構図の変更をされたのですか?
全体を通して言えることですが、特に雨の場面や雪の場面などは、よりリアルに描きたいと思いました。雨の匂いや、しんしんと降る雪や、温度を画面を通して感じてもらえたら嬉しいと思って描きました。
また絵本に登場する生き物たちは、当初のラフでは可愛らしく描いていましたが、この絵本では生き物たちも、花びらの一枚も、雨や雪の一粒も全てを主役にしたかったので、生き物たちはなるべく個性を出さない方がより自然の中の一部として描けるのではないかと思って構図を変更しました。
───文章全体が詩的で、シンプルですが心に響くものがあります。文章はどのように考えられたのでしょうか? 文章が先に浮かんで絵を描かれるのでしょうか?
最初に各場面が出てきました。それに合わせて文章を作り、さらに絵を変え、また文章を変えていきました。絵と文章、ほぼ同時に進めていった感じです。この絵本では特に絵で見せたかったので、文章はできるだけシンプルに削っていきました。
───タイトルにもなっている「じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ」は、本文でも何回も繰り返し登場しますね。何度も声に出して読むと、どんどん心地よくなってくるこのフレーズはどのように生まれたのですか?
「じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ」の言葉は、ラフを描いている時に自然と出てきました。この言葉は季節のバトンを渡すもの(例えば、たんぽぽの綿毛にそっと降りる蝶や、懸命になく蝉…など)が言っているのか、あるいはもっと大きな自然の存在が言っているのか、どちらでも捉えられる様にしたいと思いました。
読み聞かせをする時は、暖かな太陽の陽射しや、風の囁きのように優しく「じゅんばんですよ」と伝えるように読んでもらえたら嬉しいです。
───絵のタッチもとても印象に残るのですが、どんな画材を使って描いているのですか? 今までの描き方と変えた部分はありますか?
今まで作ってきた絵本の多くは、紙を切って貼り合わせるコラージュで作っていますが、この絵本ではコラージュはもちろん、直接アクリル絵の具や水彩絵具で描いたり、和紙に色をのせて手でちぎって貼ったりと色々なやり方を組み合わせて描きました。
その場面ごとに何が一番良い表現かを考えながら実験しながらの作業は、とても楽しかったです。
───絵本の中で特に好きな場面、描いていて印象に残っている所を教えてください。
雨のシーンでしょうか。今まで作ってきた絵本では雨の粒をカットして貼っていたのですが、その表現ではこの絵本の内容にそぐわないと思い、色々と試して背景の水彩の上に色鉛筆で雨の線を表現しました。まっすぐな線を描きたかったので製図用のドラフターを使いました。初めての試みでしたがうまくいきました。
───特に表現など、苦労した場面はありましたか?
雪のシーンは少し苦労したかもしれません。実際にある程度雪の降る地域に住んでいるので、少しこだわりました。雪が降っている向こうにある木々の色、さらにもっと遠くの森の色、空の色。何枚も何枚も色の紙を作りました。降っている雪も同じ表現だと単調になってしまうので、様々な白で描いたり貼ったり、時間をかけました。
───この絵本を読むと、四季の移り変わりを強く感じることができますね。『じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ』を読んだ方に、どんなことを伝えたいですか?
この絵本を作っていく中で、当たり前のように巡ってくる季節や、一日一日はとてもかけがえのないものなのだと気づきました。遥か昔から続いてきた終わりのないリレーがこれからもずっと、子どもたちが大きくなってその子どもたちが大きくなって、その先もずっとずっと続いてほしいと願っています。
───お二人の好きな季節を教えていただけますか?
acco:全部の季節が好きですが、特に冬が好きです。それも寒い雪の日が大好きです。どんどん白くなっていく地面や景色、全てが別世界に変わっていく! そして、夜中に降り続いたときに、早朝の誰も歩いてない雪の上を歩くのがまた最高。
toto:秋が好きです。登山をするのですがこの時期は温度がちょうど良く、また紅葉がとても美しいです。それから秋の味覚もいいですね。
───絵の中には、たくさんの生き物が登場しますが、お二人が好きな生き物、飼ってみたい生き物は何ですか?
我が家にはたくさんの生き物たちがいます。犬、トカゲ、アオダイショウ、ボールパイソン、リクガメ、クサガメ、ヘラクレスオオカブト。以前はうさぎ、卵から羽化させた白姫ウズラを飼っていました。
これから飼ってみたい生き物は特にないのですが、庭にやってくるたくさんの生き物たちともっと距離を縮めていけたら良いなぁと思っています。ホオジロ、キジバト、ヒヨドリ、カラス、キジ、リスなどいつか手渡しでご飯をあげられたらと願っています。
───そんなにたくさんの生き物と暮らしているから、絵本の中の生き物たちがとても生き生きと描かれているんですね。最後に、読者のみなさまへ、メッセージをお願いします。ありがとうございました。
いつも絵本を読んで頂きありがとうございます。
『じゅんばんじゅんばんじゅんばんですよ』は今までのaccototoの絵本とはちょっと描き方が違います。その辺りをじっくりと見て絵を楽しんでいただけたら嬉しいです。またお子さんと一緒にこの本を通して色々と会話をしていただけたら幸いです。
───ありがとうございました。