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出版社エディターズブログ

2024.05.09

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「こんな絵本、見たことない!」1冊まるごと回文絵本『つるわるつ』、作家×画家×デザイナー インタビュー! (文研出版)

2024年1月。この世界に、世にも不思議な絵本が誕生しました。

前から読んでも、後ろから読んでも同じ言葉になる「回文」を、まるごと1冊の絵本で表現した、『つるわるつ』。

なんと、中の文章は表紙から読んでも裏表紙から読んでも「回文」で、表紙から読んだときと裏表紙から読んだときの内容は違う、今までにない絵本なのです!

この絵本をつくった、作家の林木林さん、画家の岡本よしろうさん、デザイナーの中嶋香織さんへの、お三方そろっての豪華インタビューが実現しました。

この絵本の制作秘話から、読者のみなさんへのメッセージまで、たっぷりお届けします!

まず、林木林さんにお聞きします。この本ができるきっかけは何だったのですか?

林さん;『つるわるつ』の前に出した回文絵本『さかさしりとり』(しりとりと回文が同時に楽しめる回文絵本)に、背景の小ネタとしても随所に回文を散りばめていました。

その中に「つるわるつ、つるわにわるつ…」と、ワルツを踊る動物たちが続いていくシーンがあったんです。それを見た当時の編集さんが、「ここで小ネタとして使ってはもったいない。これで絵本が1冊作れますよ」って。

それじゃあ、「回文」の特性を活かして、前からも後ろからも読める絵本にしませんか、と提案しました。 最初はどんな絵本になるか全然想像できなくて、「つるわるつ」で始まる1冊分の回文のテキストを5パターンくらい作りました。

最終的に生き物メインのものに絞りましたけど、初期の案には果物がいたり、「つくえ」とかの静物もいたような…?

この絵本では「トマト」が重大な鍵を握りますが、それは最初から決まっていたのですか?

林さん;いえ、全然。その5パターンくらい書いた中の1つに、「トマトたべたトマト」という文があって、それを絵本の中心に持ってきたらいいんじゃないか、ということになって。最初はホラーのイメージもなかったので、あんな恐ろしいトマトになるとは思わなかったです笑

岡本よしろうさんにお聞きします。この絵本の依頼が来たときのお気持ちは?

岡本さん;難しいな、とは思った気がします。とにかくやってみようと、ラフを描いて、木林さんに会ってお見せしながら打ち合わせをしました。あれは…

林さん;2019年ですって。そもそも「この絵本を作ろう」って話になったのが2016年でしたから、時間が経ちましたね。

岡本さん;その打合せで、この絵本の世界観が醸成されたような気がします。「つる」と「トマト」の関係性とか、「なぜ舞踏会にお客さんを招待するのか」とか…。「つる」が「トマト」の執事で、お客さんを招待するのは…その先は、絵本を読んでのお楽しみということで。

林さんと岡本さんは、これより前にも一緒に絵本を作られていますよね。

林さん;『ゆきだるまとかがみもち』(鈴木出版・2020年)ですね。

岡本さん;ともに山口県出身、という共通点もあります。

では、お二人の間には絶大な信頼感があったわけですね。

岡本さん;そうですね。お会いしてラフを見せてからは、任せてくださいということで、進めていきました。

ラフと、実際にできた絵本はだいぶ雰囲気が違いますね。

岡本さん;ラフでは、「窓の外に誰かいる」などの小ネタも入れ、舞踏会の豪華さも出すようにシャンデリアなどにも凝っていたのですが、いろいろ考えて、そういったものはなくして、回文の世界に入り込めるようにしました。

あと、スポットライトを描いたのが大きかったですね。最初は背景が明るかったんですけど、これで面白いのか? 注目できるのか? と思って、スポットを当ててみたらぐっと印象が変わりました。

林さん;すごくいい雰囲気が出ましたよね。

打合せ時のラフ。これが…
こうなった!!

雰囲気といえば、この絵本全体のデザインがすごく素敵ですよね。中嶋香織さんは、岡本さんのご指名だとか。

岡本さん;そうです。「素敵」魔術師の中嶋さんなら、僕の泥臭い絵を豪華にお洒落にしていただけると思って。

林さん;前作の回文絵本『さかさしりとり』のデザインも中嶋さんでした。

中嶋香織さんに、まず表紙のことをお伺いしたいです。最初、岡本さんが表紙にと出された絵と、実際の表紙イラストが異なるようですが、この絵を表紙に選ばれたのはなぜですか?

中嶋さん;最初に岡本さんが描いてくださった絵はオーソドックスなカバーらしい絵で、カバーとしても問題ないものだったのですが、本の世界観を一瞬で伝えるのに何かが足りない気がしまして。 本の中の世界と外側とを行ったり来たりして試作してみたところ、「おじぎしているつる」の絵が、足りない何かを補ってくれそうだなと気がついたので、こんなカバーはどうでしょうとご提案させていただきました。

デザイン前の表紙案(左)と、実際の表紙(右)

表紙の、深みのある色も素敵ですよね。上の画像からもわかるように、岡本さんの想定されていたものとは異なるようですが、この色にされた決め手はなんですか?

中嶋さん;色を考える時は、いつもベストに辿り着くまで何パターンも時には何十パターンも考えるのですが、今回のベストはこの色でした。優雅でちょっと怖いような本の世界を包む色として、ぴったりだなと。

『前からもうしろからも読める』この絵本ならではの、気をつけた点があれば教えてください。

中嶋さん;前から読んでも後ろから読んでも流れに違和感のないように気をつけています。

『つるわるつ』には広告動画もありますが、キャプションを見て驚きました! 岡本さん自ら制作されたんですね。CMソングの作詞作曲もされたとか。

岡本よしろうさん制作の『つるわるつ』動画はこちら!

岡本さん;ああやっていろいろ作るのが好きなんです。実は、この仕事の話が来た頃から、ワルツの研究がてら曲は作ってました。動画のとはちょっと違うんですけど。

林さん;岡本さんが動画を作られるのを知っていたので、今回もぜひ何か作っていただきたくて…。インパクトのあるものにしていただいたし、動く「つる」が見られて嬉しかったです。

中嶋さん;絵本の世界を見事にあらわした音楽で、岡本さんの器用さにあらためて驚きました。こうやって別な方向から世界を広げられるなんて、とてもいいですね。

岡本さん;歌っているのは編集さんのお子さんです。ぜひ動画も見てくださいね!

最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

林木林さん;ひとつひとつの回文を前からも後ろからも、1冊分のストーリーを表紙からも裏表紙からも読んで楽しんでいただけけたら嬉しいです。ユーモラスな動物たちが優雅に踊り続けるゴシックホラーな舞踏会へ、ぜひお越しください。

岡本さん;この絵本の楽しみ方はいろいろです。声に出して読んだり歌ったり、音楽(ワルツ)を聴きながら踊ったりするともっと楽しくなるかもしれませんよ。

中嶋さん;岡本さんの絵ののびやかさを大切にデザインしたので、皆さんにも楽しんでほしいです。

究極の回文絵本『つるわるつ』を、ぜひチェックしてくださいね!

 『つるわるつ』を、みてみてみ!

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記事の中の作品紹介

  • 林 木林

    林 木林(ハヤシ キリン)

    山口県生まれ。詩人、絵本作家。詩情あふれる独自の視点で多彩な作品を創作。言葉遊びの達人でもある。詩のボクシング全国チャンピオン。サンリオ詩とメルヘン特別賞などを受賞。絵本『ひだまり』(光村教育図書)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞、『みどりのほし』(童心社)で児童ペン賞絵本賞を受賞。詩集、絵本、翻訳、作詞など作品多数。

  • 岡本 よしろう

    岡本 よしろう(オカモト ヨシロウ)

    1973年山口県宇部市生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒業。絵画・イラストから立体まで、幅広く制作活動を行っている。絵本に『まちぼうけの生態学』(遠藤知二・文/福音館書店)、挿画に『ぼくたちに翼があったころ―コルチャック先生と107人の子どもたち』(タミ・シェブ=トヴ・作/福音館書店)などがある。

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