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絵本紹介
2024.08.06
8月になりました。
今日はどこへ遊びに行こうか? 誰と遊ぼうか?と天真爛漫に過ごしていた低・中学年の時期が終わると、自分の心情さえ持て余し気味になる小学校高学年、10代がやってきます。友だちとの関係の変化、親との関係の変化、夏期講習や中学受験対策など環境の変化……。大人である我々もかつて経験してきた道ではあるけれど、今の子どもたちを取り巻く環境は、以前より複雑で繊細、なかなか踏み込んでいくことが難しい時期でもあります。
そんな変化に敏感な時期に、同じように繊細で悩みを抱える等身大の主人公が登場する物語と出会ったら、どんな感情の変化が起こるのでしょうか。
今回は「多様性」をテーマに10代の心を描くショートストーリー集『君色パレット 多様性をみつめるショートストーリー〈第2期〉』から『すきなあの人』『きらいなあの人』『なんでもないあの人』の魅力をご紹介します。
みどころ
「すきなあの人」……思い浮かべるのはどんなことですか?
「すき」というとなんとなく恋愛の「すき」に結びつくことが多いでしょうか。
この本で出会う4つの物語には、恋愛の「すき」だけではない、さまざまな「すき」の感情と、さまざまな「すき」の関係が登場します。
憧れの完璧な同級生のことを全部真似したいぐらい「すき」、最高の答えを出してくれるバーチャルアシスタントがぼくの「カノジョ」に!?、登校時に見かける素敵な男の子に恋をする男の子の話、おばあちゃんの恋がわたしに教えてくれた「すき」のかたち。
各お話のラストに1枚の余白を置いて登場するひと言が印象的です。お話の余韻を感じている心に「あなたはどう思う?」とまっすぐに飛び込んでくるのです。
絵の具からいろいろな色が出現する「パレット」のように、4つの物語に出てくる主人公自身もユニークなら、体験する「すき」も多様であり、この本で思ったこともなかった「すき」の感情と出会う人も多いことでしょう。たびたび自分の「当たり前」を揺さぶられたり、自分の中に知らず知らずのうちに持っていた「ふつう」への価値観に気づかされたりと、発見がたくさんあります。
向き合う相手の本音を知ることや違う一面を知ること、それは決してこわいことではなく、自分の世界を広げてくれること。登場人物の多様性と柔軟さに、もっともっと自由に生きていいんだ、という希望がみえてくるのです。
現在6冊刊行されている「君色パレット」シリーズは、現在、児童文学の世界を引っ張る人気の書き手の方たちが揃って執筆されているところも大きな魅力です。1話1話完結の短編には、作者それぞれの魅力が詰まっていて、全く違った色相を見せてくれるところにも多様性が感じられます。好きな作家さんを見つけるきっかけや、気に入ったお話があったらそのお話を書いた作者の他の本を調べて読んでみるなど次の読書に繋げるきっかけとしてもおすすめです。
シリーズ第2弾で描かれるのは「すきなあの人」、「きらいなあの人」、「なんでもないあの人」……あなたはどの関係性が一番気になりますか? また自分に一番影響を与えてくれそうなのはどの人でしょうか。
多様な時代を生きていくみんなへの作家からの温かなエールが詰まったシリーズ、気になる関係性から、または気になる表紙の色から、自由に選んで手にとってみませんか。
みどころ
「きらいなあの人」……。「きらい」と聞くとなんだかドキッとしませんか。でも不思議と気になるのが「きらい」という感情。
この本に収録されている4つの物語には、さまざまな「きらい」の思いと、さまざまな「きらい」の関係が登場します。
なんでも早くできてしっかり者のオレが、忘れ物が多くすべてにゆっくりなアイツに抱く「きらい」、上から目線のオレ様態度でわたしに挑んでくる転校生への嫌悪感、自分の考えをはっきり言う帰国子女の転校生に感じるもやもや、友だちに合わせて言いたくもない言葉を言ってしまった自分に嫌気がさして消えようと思う主人公。
絵の具からいろいろな色が出現する「パレット」のように、4つの物語に出てくる主人公自身もユニークなら、どうしても感じてしまう「きらい」の感情や相手との関係性もさまざま。けれども「きらい」の感情にはどこか共感できるものが多いのではないでしょうか。そして「きらい」な相手こそが一番自分を知るきっかけになるような気がしてなりません。4つの物語が教えてくれるのは、「きらい」だからと避けたり拒絶するのではなく、一歩向き合ってみた時に起こる思いもかけない発見。相手を知ることは、自分を知ることでもあり、世界をぐんと広げてくれること。「きらい」というマイナスの感情から始まる物語が、温かななにかへと変わっていく様は、希望をも見せてくれるのです。
現在6冊刊行されている「君色パレット」シリーズは、現在、児童文学の世界を引っ張る人気の書き手の方たちが揃って執筆されているところも大きな魅力です。1話1話完結の短編には、作者それぞれの魅力が詰まっていて、全く違った色相を見せてくれるところにも多様性が感じられます。好きな作家さんを見つけるきっかけや、気に入ったお話があったらそのお話を書いた作者の他の本を調べて読んでみるなど次の読書に繋げるきっかけにもしてみてくださいね。
シリーズ第2弾で描かれる「すきなあの人」、「きらいなあの人」、「なんでもないあの人」……あなたはどの関係性が一番気になりますか? また自分に一番影響を与えてくれそうなのはどの人でしょうか。
多様な時代を生きていくみんなへの作家からの温かなエールが詰まったシリーズ、気になる関係性から、または気になる表紙の色から、自由に選んで手にとってみませんか。
みどころ
「なんでもないあの人」……。
「なんでもないあの人」ってどんな人のことをいうのでしょうか。
本に登場するのは、鮮やかな赤い色のスカートで現れる小さな町の有名人、ほとんど話したことがなかったのに転校したら親しげに手紙を送って来る元同級生、小説を書くのが好きなわたしが市の文学賞の授賞式で見た情けないおじさん、毎朝なぜか黒板に予言を書く隣の席の人。
読めば、ああ自分の周りにもいるかも、と分かってくる「なんでもない人」。実は「すきな人」よりも「きらいな人」よりもたくさん存在しているのかもしれませんね。でもその「なんでもない人」が主人公に、そして読者である私たちに教えてくれるのは、決してなんでもないことではないのです。
絵の具からいろいろな色が出現する「パレット」のように、4つの物語に出てくる主人公自身もユニークなら、出会う「なんでもない人」も多様です。「なんでもない」存在だけれどなぜか気になってしまったり、突然気になり出す相手。その相手のことを考えることで、自分の「当たり前」が大きく揺さぶられたり、知らず知らずのうちに自分が「ふつう」ということへの価値観を決めつけてしまっていたことに気づかせてくれるのです。よく分からないと思っていた誰かを一歩深く知ることは、思いもかけない形で自分の世界を広げてくれること。登場人物の多様性と柔軟さに、もっともっと自由に生きていいんだ、という希望がみえてきます。
現在6冊刊行されている「君色パレット」シリーズは、現在、児童文学の世界を引っ張る人気の書き手の方たちが揃って執筆されているところも大きな魅力です。1話1話完結の短編には、作者それぞれの魅力が詰まっていて、全く違った色相を見せてくれるところにも多様性が感じられます。好きな作家さんを見つけるきっかけや、気に入ったお話があったらそのお話を書いた作者の他の本を調べて読んでみるなど次の読書に繋げるきっかけにもしてみてくださいね。
シリーズ第2弾で描かれるのは「すきなあの人」、「きらいなあの人」、「なんでもないあの人」……あなたはどの関係性が一番気になりますか? また自分に一番影響を与えてくれそうなのはどの人でしょうか。
多様な時代を生きていくみんなへの作家からの温かなエールが詰まったシリーズ、気になる関係性から、または気になる表紙の色から、自由に選んで手にとってみてくださいね。自分の感情や周りの人の感情の複雑さに敏感になっていく小学5年生ぐらいから中学生に。また大人の方にもおすすめのシリーズです。
『君色パレット 多様性をみつめるショートストーリー〈第2期〉』(以下「君色パレット」シリーズ)は、1冊の中に4つの短い物語が入っているアンソロジーです。
著者には、テレビアニメ化・劇場アニメ化された「若おかみは小学生!」シリーズ(講談社)の令丈ヒロ子さんをはじめ、「ぼくのまつり縫い」シリーズ(偕成社)の神戸遥真さんや『ろくぶんの、ナナ』(岩波書店)の林けんじろうさん、『サイコーの通知表』『だれもみえない教室で』(共に講談社)の工藤純子さんなど、10代の子どもたちの姿を紡いできた実力派ぞろい。
一人称で書かれている物語は、キャラクター同士の会話でやり取りで進んでいく場面も多く、今の子どもたちに合わせた工夫が凝らされています。
短編集なので、普段長い物語を読み慣れていない子にも読みやすく、一話完結なので、目次を見て気になった作品から読んでみてOK。面白かったら次の作品へと読み進めてみるのがおすすめです。最初から最後まで順番に読まなくても大丈夫です。
目次を見て、気になる一話を読めば、今の自分の心情に寄り添ってくれる物語だと気づき、きっとほかの作品も読んでみたくなることでしょう。
「君色パレット」シリーズそれぞれのタイトルは『すきなあの人』『きらいなあの人』『なんでもないあの人』。これは各作品の主人公が対峙する「あの人」との関係を表しています。「好きと嫌いはわかるけど、『なんでもない』ってどういう意味?」とタイトルだけ見ると、ちょっとドキッとしますよね。でも4編のお話を読むと確かに「なんでもないあの人」というのは自分の身近にもいるなぁということに気づかされます。「なんでもないあの人」が作品の中でどう主人公と関わっていくのか、それによって主人公の心情がどう変化していくのか、読んでいく楽しさがあります。
そして、同じような発見は『すきなあの人』『きらいなあの人』の中にも。「好き」という感情には恋愛的な意味ばかりではなく、大好きなアイドルなど<推し>に対する「好き」や、自分の「好き」の意味が分からず持て余してしまうもの。反対に相手からの「好き」の感情に戸惑うことなど様々。
もちろん、「嫌い」になるのにも主人公としては正当な理由があります。でも、主人公が見ている面が相手の本当の面なのか、意外なきっかけから相手との関係が変わることもあるのか……。
『すきなあの人』に収録されているけれど、最後は別の感情に変わってしまう。『きらいなあの人』に入っているけれど、本当の気持ちは……など、3冊を通して読むとより深く考えてしまう。「好き」「嫌い」「なんでもない」をきっかけに感情と関係の多様性にグッと踏み込んでくるシリーズなのです。
10代の繊細で細やかな心情にそっと彩を添えてくれるイラストは、人気イラストレーター・いつかさんによるもの。それぞれの表紙の3人の少年少女の表情や佇まいはもちろん、ページのあちこちに主人公の少年少女のさまざまな感情が見え隠れするイラストが描かれています。
驚いた表情や戸惑いの顔、照れたような笑顔を浮かべる口元など……。そのどれもがぐっと引き込まれ、ページをパラパラめくって挿絵に出会うと「この作品を読んでみようかな」ときっと多くの子どもたちが興味を持つことでしょう。
甘すぎず、キラキラしすぎず、それでいてとてもリアルな子どもたちの日常を切り取ったイラストたちは、ちょうどよいバランスで物語をそっと支えています。
レースやフリル、ハートなどキラキラした子どもっぽいものは卒業したい。かわいい大人っぽいものにちょっとでも背伸びしても触れていたい。「君色パレット」シリーズはそんな10代の気持ちにピッタリな本の装幀、デザインも魅力のひとつです。
第1期から踏襲したパステルカラーのカバーは、甘すぎず、シックすぎず優しい色あい。カバーにそっと手を滑らせるとタイトルの「君色パレット」がぷっくりと浮き出す「エンボス加工」が施されていることに気づきます。
表紙はカバーと同じ色のドットがデザインされていて、カバーを外して持っていてもとても目を惹きます。
さらにオシャレなのが、表紙をめくってすぐに出てくる「見返し」の部分の紙。カバーと反対色の紙が使われていて、めくるとハッと目に留まります。
パープルの『すきなあの人』の見返しは「ピンク」。オレンジの『きらいなあの人』は「グリーン」。ではライトグリーンの『なんでもないあの人』の見返しは……? 本を手に取って確認してみてくださいね。
いかがでしたか? 毎日本当に暑く、長時間外に出ることも難しい今年の夏。気温が高い時間帯は、室内での読書タイムにして、「君色パレット」シリーズを読破してみてくださいね。