穴に指をいれて、ぷっくり〜ぽっこり! 新感覚のあかちゃん絵本!
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電車の中で、マイロはスケッチブックを広げます。隣にすわったひげのおじさんはきっと……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『マイロのスケッチブック』。後半の思いがけない展開に心を動かされるこの絵本、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
やがてマイロはスケッチブックを閉じ、窓に映る自分の姿を見て思うのです。
「ぼくの かおを みて、ひとは どんなことを そうぞうするのだろう?」
きっとその想像は、自分が思っているものと違うかもしれない。人は見かけだけではわからないのだと、マイロは気づきます。電車が目的の駅に着くと、同じく緊張しているおねえちゃんとある場所へ向かいます。
既刊『おばあちゃんとバスにのって』の作家・画家が再びペアを組んだこの作品。本文には詳しく描かれていないけれど、マイロとおねえちゃんが訪れたところは刑務所。そして電車の中で目が合い、気おくれするほど立派なジャケットを着たあの男の子も、同じ場所に向かっていたのです。
思いもよらない展開やその心境は、読者の想像を超えたところにあるのかもしれません。けれど、どんな気持ちでいる時にでも、現実の世界をしっかりと受け止め、大事なことを見逃さないマイロの姿に、私たち大人は心を打たれます。読み終わった後に動揺してしまうのは、自分もまた先入観にとらわれていたことに、気がつかされたからでしょうか。
最後にマイロが見せてくれた、切実な想いを込めた絵。彼の願いが少しでも早くかないますように。
今の時代に必要なものとは
どんなに複雑な舞台設定だとしても、その様子が自分たちの住んでいる街とは全然違っていたとしても。読めば、すんなりと物語の中に入っていけるこの絵本。それは、マイロの心境に寄りそいながら、わかりやすく進んでいく文章に、親しみやすく愛らしい絵を描きながら、そこに多くの情報を映しだしてくれているから。「多様性」という言葉を出さなくても、今の時代に必要なのは何なのか、子どもたちにもしっかりと伝わってくる1冊です。
この書籍を作った人
ニューヨーク在住の作家。創作執筆コースで後進の指導に当たっている。 『おばあちゃんと バスにのって』(鈴木出版)でニューベリー賞、コールデコット賞オナー賞受賞。ほかに『カルメラのねがい』(鈴木出版)、『Love すべては あなたの なかに』(評論社)、『だいすきなぼくのかぞく リメンバー・ミー』(小学館)などがある。
この書籍を作った人
1986年アメリカ、カリフォルニア生まれ。カリフォルニア芸術大学でアニメーションを学び、セサミワークショップやピクサースタジオなどで働いたのち絵本作家となる。おもな作品に『ガストン』(講談社)、『がっこうだってどきどきしてる』(WAVE出版)などがある。『おばあちゃんとバスにのって』(鈴木出版)がコールデコット賞オナーブックに選ばれる。カリフォルニア在住。「ぼくたちはみんな、どこかでつながっている。そのことを今の子どもたちに伝えたい」と語っている。
この書籍を作った人
1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。